不動産購入時の「手付金」について
- 家を買う
“頭金=現金で払える分”と考えると危険? 資金計画でよくある落とし穴
不動産購入を検討する際、「頭金」という言葉を頻繁に耳にします。
しかし、多くの方が「家を買うときに使える現金」といった曖昧なイメージで捉えており、この“なんとなくの理解”が、後々の資金計画トラブルの原因となるケースが少なくありません。
今回は、実際に起こりやすいトラブル事例とともに、「手付金」と「頭金」の正しい考え方を解説します。
よくある資金計画の混乱事例
たとえば、頭金として800万円を準備していたとします。
8,000万円の物件を購入する際、売買契約時には次の支払いが必要です。
- 手付金:400〜800万円(物件価格の5〜10%が相場)
- 仲介手数料の半金:約140万円
この時点で、頭金800万円のうち約940万円を使う計算になります。つまり、手元の現金がすでにマイナス状態です。
契約前の説明で
「諸費用は物件価格の7%(約560万円)ほどで、通常は現金でご用意ください」
と聞いていたことを思い出し、焦ってしまいます。
「もう現金が足りないのに、さらに560万円も必要なのか」と不安になる方も多いでしょう。
冷静に計算し直すと、仲介手数料の半金140万円も諸費用の一部に含まれるため、560万円 − 140万円 = 残り420万円が実際の諸経費です。それでも「400万円以上足りない」という状態です。
このような資金ショートの錯覚は、実は珍しくありません。多くの購入検討者が「頭金=契約時の現金」と混同してしまうことで起こる典型的な例です。
手付金の基本的な仕組みと性質
不動産売買契約時に支払う手付金には、次の3つの性質があります。
- 契約成立の証拠金:売買契約が正式に成立したことを示す証拠
- 契約履行の担保金:契約を履行する意思を示すための担保
- 物件代金の一部:最終的には購入代金の一部として充当される
つまり、手付金は追加で支払うお金ではなく、購入代金の一部として扱われます。ただし、契約時に現金で用意する必要があるため、資金計画における現金配分を誤ると、後の支払いに影響を及ぼす可能性があります。
手付金は「頭金」なのか、それとも「ローン」なのか
結論から言うと、手付金は頭金の一部でもあり、ローンで賄う対象でもあるという位置づけです。
混乱を防ぐために、頭金の定義を正確に理解しておきましょう。
頭金 =(物件価格+諸費用+リフォーム等)− 住宅ローン借入額
つまり、「手付金=頭金」ではありません。頭金とは、購入に要する総費用に対して自己資金として充てる金額全体を指します。
実際の取引における資金の流れ
実際の城南エリアでの事例を想定して、契約から決済までの資金の流れを見てみましょう。
購入費用の内訳
契約時に必要な費用
- 手付金 約200〜400万円
- 印紙代 約3万円
決済時に必要な費用
- 仲介手数料 約270万円
- 登記費用 約30万円
- 住宅ローン関連費用 約60万円
- 火災保険料 約20万円
- 固定資産税等精算金 約30万円
- 印紙代・その他諸費用 約30万円
諸費用の詳細内訳と支払いタイミング
1. 仲介手数料
- 計算式:(売買価格 × 3% + 6万円)+消費税
- 8,000万円の場合:約280万円(税込)
- 支払い時期:契約時50%、決済時50%(※ウィル・ビーでは、決済時100%でのお支払いもご相談可能です。)
2. 住宅ローン関連費用
- 事務手数料:借入額の2.2%または定額(銀行により異なる)
- 保証料:借入額・期間により変動(0.2%程度が相場)
- 火災保険料:建物価格や保険期間によって異なる
- 団体信用生命保険料:多くの銀行で金利に含まれる
- 支払い時期:主に決済時
3. 登記関連費用
- 登録免許税:固定資産税評価額の0.3%(住宅用の場合)
- 司法書士報酬:15〜25万円程度
- 支払い時期:決済時
4. その他の費用
- 固定資産税・都市計画税精算金:引渡日に応じた日割り計算
- 管理費・修繕積立金精算金(マンションの場合)
- 印紙代(売買契約書・ローン契約書用)
- 支払い時期:主に決済時
「手付金=契約時に必要な現金」だが、「頭金のすべて」ではない
- 手付金=契約時に現金で支払う「意思表示金」
- 頭金=総費用の中で自己資金として出す金額全体
- 諸費用=契約時・決済時に必要な現金支出
- 手付金を多く支払いすぎると、決済時に資金不足のリスクが生じる
不動産購入は、人生の大きなターニングポイントです。
「手付金」と「頭金」の違いを正しく理解し、契約時から決済時までの資金の流れを具体的に把握しておくことが、安心して住宅購入を進めるための鍵となります。
「勘定あって銭足らず」とならないよう、購入前の段階から、信頼できる不動産会社や金融機関と資金計画のシミュレーションを行うことをおすすめします。