2026年に向けた賃貸市場の見通し 「上がる市場」で問われる物件力

  • 賃貸管理

2025年以降、不動産の賃貸市場は大きな転換期を迎えています。これまで横ばいが続いていた家賃相場にも変化の兆しが見られるとされ、オーナー様にとっては収益改善の可能性がある一方で、入居者の物件選びの目はより一層厳しさを増しています。

本コラムでは、現在起きている家賃動向の背景にある構造変化を紐解きながら、新築供給の減少に伴う既存物件の価値見直しの動向について解説します。さらに、市場で見られる“二極化”の実態と、「選ばれる物件」になるための条件、2026年に向けてオーナー様に求められる対応のポイントをご紹介します。

家賃動向の背景にある賃貸市場の構造変化

2025年春の繁忙期を経て、賃貸市場には上昇傾向の兆しが見られるとされています。この動きは一時的な需要増だけでなく、複数の構造的要因が重なっている点が重要です。

特に東京都を中心とした都市部では、人口流入が続く傾向にあり、賃貸需要の土台は安定的に推移しています。加えて、分譲マンション価格の高止まりにより、購入を見送る層が賃貸に留まる傾向も見られます。

また、在留外国人の増加も都市部の賃貸需要を支える要因の一つとされています。

一方で供給側では、建設コストや人件費の上昇が続いており、新築供給は抑制傾向にあります。

賃貸市場の構造変化
ポイント:市場を押し上げる主な要因
  • 東京圏への人口流入の継続
  • 分譲住宅価格の高止まりによる賃貸需要の維持
  • 建築費・人件費上昇による供給抑制

これらが重なり、「需要は堅調だが供給は伸びにくい」という構図が形成されています。

新築供給の減少と既存物件の位置づけの変化

既存物件の価値見直し

供給が抑制される局面では、既存物件の位置づけが変化します。新築との比較で不利とされてきた物件でも、相対的な選択肢の減少により検討対象となるケースが増えています。

新規供給が限られることで、同一エリア内での選択肢が固定化されやすくなり、一定の条件を満たす既存物件は賃料の維持につながる可能性があります。

既存物件に見られる変化としては、以下の点が挙げられます。

  • 新築供給減少により検討対象に入りやすくなる
  • 一部では空室リスクの緩和が見られるケースもある
  • 賃料の下支え要因として作用する可能性

ただし、この影響はすべての物件に及ぶわけではありません。むしろ、供給が限られる中で入居者の選別意識は高まり、物件ごとの競争力の差がより明確になります。

市場で進む“二極化”とその実態

現在の賃貸市場では、すべての物件が一様に恩恵を受けるわけではなく、競争力の違いによって結果に差が生まれています。

具体的には、「空室期間」「賃料水準」「入居者層」において差が広がる傾向が見られ、いわゆる“二極化”が進んでいると考えられます。

二極化の具体的なイメージ
  • すぐに決まる物件と、長期空室になる物件
  • 賃料を維持・上昇できる物件と、値下げが必要な物件
  • 安定した入居者が集まる物件と、条件重視層に偏る物件

市場環境が良い中でも、「選ばれる物件」と「選ばれない物件」の差は拡大する傾向にある点が重要です。

選ばれる物件とそうでない物件を分ける要素

現在の賃貸市場では、同じエリア・同じ間取りでも結果に差が生じています。その分かれ目となるのが、「立地」「築年数」「設備」といった基本条件です。

1. 立地:駅からの距離は重要な判断要素

テレワークの普及により通勤頻度は減少しましたが、駅からの距離は依然として重要な判断材料です。駅に近い物件は安定した需要が見込まれる一方で、距離がある物件では条件面での工夫が求められる傾向があります。

2. 築年数:設備・性能面の影響

築年数が経過した物件は、耐震性や断熱性、防音性などの観点から敬遠されるケースがあります。こうした性能差は、賃料設定や入居者層にも影響します。

3. 設備:入居判断に直結する要素

設備に対する期待水準は年々高まっています。現在では以下のような設備が、入居判断に影響するケースが増えています。

  • 宅配ボックス
  • インターネット環境
  • 浴室乾燥機
  • 独立洗面台

競争力を高めるための実践的な対応

物件の競争力を維持・向上させるためには、適切な改善が重要です。特に費用対効果市場ニーズとの適合を意識した対応が求められます。

例えば、水回りの改善は印象面・機能面の両方に影響しやすく、入居検討時の評価向上につながります。また、賃料についても周辺相場や競合物件とのバランスを踏まえた見直しが重要です。

競争力を高める施策
主な対応ポイント
  • 水回り(キッチン・浴室)の改善による印象向上
  • インターネット環境の整備
  • 宅配ボックス設置など利便性向上
  • 最新の成約事例に基づく賃料見直し
  • 周辺物件との比較によるポジション把握

2026年に向けた賃貸経営の考え方

2026年の賃貸市場は、家賃上昇の流れが続く可能性があります。ただし、その恩恵を受けられるかどうかは物件ごとに異なります。

重要なのは、自身の物件が市場の中でどの位置にあるかを客観的に把握することです。競合との比較を行い、強みと弱みを整理した上で、適切な対応を取ることが求められます。

また、賃料設定は固定的なものではなく、市場の変化に応じて見直していく必要があります。改善施策と賃料調整を組み合わせることで、安定した賃貸経営につながります。

「どの物件であれば賃料を上げられるのか」。
この視点を持つことが、今後の賃貸経営において重要になります。

この記事を書いた人

五十嵐 裕也 宅地建物取引士 ・既存住宅アドバイザー

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