フランスに学ぶ、省エネ性能や防犯・利便性を高める工夫
- 賃貸管理
築年数が経過した賃貸住宅の魅力を、どう保っていけばよいのでしょうか。そのヒントになるのが、古い建物を使い続けながら、暮らしに必要な機能を更新するフランスの取り組みです。建物が建てられた年代は変えられなくても、室内の快適さや、帰宅時の安心感には改善できる余地があります。今回は、省エネ性能や防犯・利便性を高める工夫に着目し、日本の賃貸経営に取り入れたい視点をご紹介します。
※写真はパリの集合住宅のイメージです。
古い建物を、今の暮らしに合わせて使い続ける
築年数と、暮らしを支える機能を分けて考える
フランスの都市部には、古い建物が数多く残っています。例えば、パリ都市計画研究所(Apur)の2023年公表資料によると、パリの建物の約6割は19世紀に建てられたものです。[出典1]
こうした建物を住宅として使い続けるうえでは、建物そのものの維持とともに、 現在の生活に合った機能を整えることが課題になります。
築年数の古さと、設備の使いにくさは、分けて考えることができます。年月を重ねた建物でも、室温を保ちやすくしたり、訪問者を室内から確認できるようにしたりすることで、暮らしの不便は改善できます。建物の特徴を生かしながら、日々の生活で負担になる部分を更新する。この考え方が、今回フランスの事例から学びたい点です。
築100年を超える集合住宅で、快適さと安心を更新
具体例として、パリの公的住宅事業者「パリ・アビタ」が手がけた改修があります。パリ19区の、1921年から建設された469戸の集合住宅では、2023年に大規模な改修が完了しました。断熱や窓、暖房・給湯設備に加え、屋外照明や共用玄関の扉、出入りを管理する設備も更新されています。[出典2]
この事例から参考になるのは、長く使ってきた建物に、今の入居者が必要とする機能を組み込む姿勢です。工事の規模をそのまままねる必要はありません。自分の物件でも「残せるもの」と「暮らしに合わせて改善したいもの」を見分けることが、設備を見直す出発点になります。
省エネ性能を高め、古い住まいの快適さを支える
フランスでは、貸し出す住宅に求める性能が変化
フランスでは、住宅のエネルギー性能を評価する「DPE」という診断が使われています。フランス本土では、2025年から最も低いG等級の住宅について、新たな契約や契約更新・自動更新の際の貸し出しが原則として認められなくなりました。2028年にはF等級、2034年にはE等級にも対象が広がる予定です。[出典3]
この動きから読み取れるのは、既存の住宅を使い続けるために、省エネ性能を整える重要性です。オーナーにとっては設備の更新費用が気になるところですが、入居者にとっては、毎日の冷暖房や給湯にかかる負担に関わります。設備投資を考える際は、貸す側の費用と、住む側の使いやすさの両方を見る必要があります。
日本の賃貸住宅でも、窓や設備の更新が選択肢に
日本でも、古い住宅の住み心地を改善する方法として、断熱性を高める工事が考えられます。環境省は、窓の交換や内窓の設置、壁・床などの断熱によって、室内外の熱の移動を抑え、冷暖房の効果を高められることを紹介しています。[出典4]
例えば、内装をきれいに整えた部屋でも、冬に窓際の寒さが気になれば、入居後の満足度を損ねかねません。内窓を設けるなど、暮らしの中で感じる弱点を補うことが、物件の魅力を支えます。設備の見直しでは、次のような選択肢を整理できます。
- 窓の断熱性を高める:既存の窓の室内側に内窓を追加するなどして、外気の影響を受けにくい室内環境を目指します。
- エアコンを見直す:部屋の広さや条件に合った省エネ性能の高い機種を選び、冷暖房の使いやすさを整えます。
- 給湯設備を更新する:高効率な機器への交換を検討し、日常的にお湯を使う際のエネルギー負担の軽減を図ります。
どこから手をつけるかは、建物や設備の状態によって変わります。入居者から寒さの相談があるなら窓や断熱の状態を確かめるなど、現状の困りごとと工事を結びつけましょう。光熱費の削減幅は使い方や住戸の条件で異なるため、具体的な金額を案内する際は、算出条件も確かめることが大切です。
防犯と利便性を補い、安心して暮らせる住まいへ
古い建物の出入口にも、今の防犯機能を加える
フランスの都市部では、古い集合住宅の出入口に防犯機能を加える改修例も見られます。施工会社Sydéralが公開するパリの事例では、既存の建物にインターホンを整備し、玄関ホールの内側の扉にも暗証番号で解錠する設備を設け、入居者に解錠用のバッジを配布しています。[出典5]
このように、建物を生かしながら、誰が出入りするかを確認・管理できる仕組みを補うことができます。古い外観から感じる印象と、実際に暮らすときの安心感は同じではありません。共用玄関から住戸までの動線に目を向けると、室内のリフォームだけでは気づかなかった改善点も見えてきます。
日本では、訪問者の確認や荷物の受け取りを見直す
日本の賃貸住宅にも、この視点を取り入れられます。警察庁は、ドアを開ける前の訪問者確認や、防犯カメラなどの活用を案内しています。また、宅配業者を装う手口への対策として、宅配ボックスなどで荷物を直接受け取らない方法も挙げています。[出典6]
物件の状況に合わせ、次のような設備を検討できます。
- モニター付きインターホン:室内から訪問者の姿を確認し、玄関を開ける前に応対を判断できます。
- 防犯カメラや共用部の照明:出入口や通路の状況を確認しやすくし、不審な行動への抑止につなげます。
- 宅配ボックス:不在時にも荷物を受け取れるようにし、配達時に直接応対する機会を減らせます。
例えば、帰宅が遅くなりやすい人にとって、玄関までの通路の見通しや明るさは気になる点です。自宅で仕事をする人なら、作業を中断せずに荷物を受け取れることにも利便性を感じるでしょう。入居者が過ごす一日を思い浮かべると、必要な機能を具体的に考えられます。
設備は、使いやすい場所に設けてこそ役立ちます。宅配ボックスまでの移動が通行を妨げないか、インターホンの映像で訪問者を確認しやすいかなど、設置後の使い方まで見ておきましょう。物件を案内する際にも、追加した機能と、それによって暮らしがどう便利になるかを併せて伝えることが大切です。
フランスの改修事例が教えてくれるのは、古い建物を使い続けるために、暮らしを支える機能を更新していく考え方です。建物の安全性や基本的な維持管理を土台に、省エネ・防犯・利便性を補うことで、今の入居者の生活に合った住まいへ近づけられます。
まずは、ご自身の物件で「長く残したい良さ」と「入居者が不便に感じている点」を挙げてみてはいかがでしょうか。ウィル・ビーでは、物件の特徴や入居者層に合わせ、設備導入や機能向上をご提案しています。「古い物件に合う防犯設備を知りたい」「住み心地を改善するために、どの設備から見直すべきか相談したい」など、お気軽にお声がけください。
出典一覧
[出典1] パリ都市計画研究所(Apur)「Datation du bâti parisien」(2023年6月)
Datation du bâti parisien
[出典2] Paris Habitat「Cité Chaufourniers-Bolivar-Moreau (19e) : nouvelle réhabilitation Plan climat」(2024年2月28日)
Cité Chaufourniers-Bolivar-Moreau (19e) : nouvelle réhabilitation Plan climat
[出典3] フランス政府 Service Public「Logement à louer décent - Métropole」
Logement à louer décent - Métropole
[出典4] 環境省「省エネ住宅を学ぼう」(断熱リフォームの解説を参照)
省エネ住宅を学ぼう
[出典5] Sydéral「Contrôle d’accès d’immeuble ancien à Paris」(施工事例)
Contrôle d’accès d’immeuble ancien à Paris
[出典6] 警察庁「住まいる防犯110番」
住まいる防犯110番
※制度・出典情報は2026年10月13日確認。
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