実際にあった!難航解決 修繕対応3選

  • 賃貸管理

今回は過去実際に対応した修繕事例の中で特に影響が大きく、解決までに時間がかかった事例3選をご紹介します。

給水ポンプ停止!全館断水の危機

症状・状況

複数の入居者様から水が使用できないとの第一報が入りました。至急、水道業者を手配の上、現地確認と症状の調査を実施しました。
調査の結果、1階部分に設置されている電気系統の不具合で、給水ポンプの電源、給水ポンプが停止し、断水が発生したことが分かりました。取り急ぎ、再度ブレーカーを上げ、給水ポンプの電源を復帰させたところ、断水の症状は改善されました。
しかし、症状が改善されたことに安堵するのも束の間、入居者から再度水が使用できなくなったとの連絡が入り、再び調査を行いました。すると、やはり同じ箇所の電源系統が落ちてしまい、給水ポンプが停止、断水が発生していました。

修理対応・その後の影響

この物件では、受水槽方式(増圧ポンプ方式)を採用しており、今回は増圧ポンプの電気系統部分の修理を行い、ポンプの停止、断水は解消されました。1階・2階部分は店舗(飲食店)、3階以上は住居で、幸いなことに1階・2階部分は公共水道の配水管からの直圧で水の供給ができる状態となっており、店舗内の断水は回避することができました。しかし、3階以上は重力の関係で、配水管の圧力のみでは難しく、ポンプで増圧することで供給することができます。よって増圧ポンプの停止は、3階以上の住戸には水が供給されないという致命的な結果を意味します。
また、修理完了・断水解消までどれだけの時間が要するか見えない中で、入居者様には独自で飲料水の確保、復旧までの期間の代替手段の確保(宿泊先の確保等)を依頼し、対してオーナーには費用負担の部分の調整・相談等を行いました。

計画的な設備更新や修繕

事例からの教訓

災害時でも断水によって、水が使用できなくなるケースはありますが、平時の設備不良が原因の断水は、入居者・物件オーナー双方にとって不利益な結果をもたらします。最近は増圧ポンプ方式による水の供給が主流で、ポンプの定期的な点検、メンテナンスがより重要になります。
また結局のところ、ポンプの稼働をつかさどる電気系統に不具合や劣化が生じることによって、ポンプ自体に異常がなくても、断水を引き起こしてしまいます。日々のより細かい建物全体の点検とメンテナンスが重要です。

大雨で漏水 電気系統の漏電と全館停電

症状・状況

先の事例では断水でしたが、今回は停電です。
この事例では、入居者から部屋の電気、家電が全く使用できないという報告が相次ぎ、夏の時期の修繕対応でしたので、エアコン等を使用されている状況もあり、緊急度の高い対応となりました。連日つづく、豪雨・落雷の影響で、共用部の分電盤へ雨水が流れ込み、漏電ブレーカーへ接触、電気系統がショートし、完全停電しました。

修繕・対応・その後の影響

電気業者・水道業者を手配し、現地の症状と状況の確認を実施しました。
漏電ブレーカーへ雨水が接触している状況で、最悪の場合、火災が発生する危険性があったため、接触している箇所の漏電ブレーカーの交換を実施しました。
しかし、この事例が困難を極めた最大の要因として、雨水の流入箇所が特定できないという点がありました。
ブレーカーを新しいものに交換し、停電が復旧した後でも、雨水の流入箇所が特定できていない以上、停電が再発する可能性は存在しています。とにかく再発を防ぐため、流入箇所を特定し、根本原因を断つための対応の中で、恐れていた事態が発生しました。入居者から再度、停電が発生したとの連絡が入りました。
分電盤上部の点検口、配線接続口、外壁からの漏水、配線系統内の防水の劣化、配線の漏電等あらゆる可能性を考え、調査を継続しました。
問題解決の一手となったのは、過去にお付き合いのあった、外壁・大規模修繕等の業者でした。分電盤室の上部の共用部の階段部分の床面シートの防水シール剤に劣化があり、そこから水が染み込んで、電気系統に接触したのではないかとの見解を頂き、劣化した部分の防水施工を実施しました。以降、雨水の流入・漏電の症状はなくなりました。

給水・排水管の老朽化 上部からの水漏れ

症状・状況

最後は、最も原因の特定が困難な給水・排水管からの漏水です。
給水・排水管の老朽化による漏水、過失による水漏れは、上階から下の階の天井部分へ水が漏れるいわゆる「階下漏水」が非常に多く、上階と下階との配管構造が複雑のため、漏水箇所の特定が極めて困難です。また、漏水によって、天井部分の壁紙や壁面のボードはもちろんのこと、専有部分の家財や居室等にも損害がおよび、入居者に与える影響度がとくに大きい事例です。
過去には、分譲マンションの共用給水管が劣化しており、天井部分から滝のように漏水し、居室・家財に甚大な被害を及ぼしたケースや排水管の劣化と建物のコンクリートの劣化が同時発生し、下の階の天井裏に漏水して、電気系統や照明などが破損したケースがあります。

計画的な設備更新や修繕

修繕・対応・その後の影響

このようなケースでは、根本的に漏水箇所の天井部分を開口して、漏れ状況を確認、原因の可能性を一つ一つ潰していく対応を行っていきます。
給水管・排水管の劣化は根本的に管自体を新しいものへ更新し、水漏れが発生しないようにしますが、水漏れによって発生した居室内の壁紙や壁のボードなどの復旧については、居住している入居者の生活や店舗テナントの営業に直接的に大きな影響を与えるため、トラブルになるケースが多いです。被害が大規模な場合、居住中の復旧工事や修繕が困難になり、仮住まいの提供や休業補償・営業補償等、過失・責任によって物件オーナーが費用を負担したり、加害者が負担したりと、実際の漏水の症状が収まった後でも当事者間での調整等が長期化します。特に分譲マンション等は管理組合や建物管理会社等が間に入るため、関係者間での調整等が多くなります。
こういったケースは被害者側も加害者側も独自に加入している火災保険や損害保険などのプランで補償や補填などができる場合があるため、内容については普段からよく理解しておく必要があります。

まとめ

以上、難航解決修繕案件3選をご紹介しました。
やはり、日々の定期的な点検やメンテナンスが特に重要で、計画的な設備更新や修繕がいかに重要かということがわかる事例でした。

ライフラインに関わる設備は特に居住者やテナントに与える影響度が大きく、損害が発生した場合、賃料の減免や補償などを主張できるようになったため、より物件オーナーは注視する必要があります。
分譲マンション等では、大規模修繕や長期修繕計画として計画的かつ段階的な修繕が実施され、ある程度の維持管理はされていますが、一棟物件等は、なかなか資金的な部分からも計画が作成されていないケースもあり、多くは損害が発生して手遅れになってから取り組むということも少なくありません。突発的なトラブルや損害、出費等を避けるためにも、同様に建物の状況や年数に応じて長期的な修繕計画や改修計画を作成し、実行していくことが重要です。

計画的な設備更新や修繕

この記事を書いた人

田井 捺記 宅地建物取引士・既存住宅アドバイザー・消防設備士乙種第4類

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