「定期借地権マンション」とは?安さの裏にあるリスクと注意点

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民法改正と共有制度の見直し時代に即した“共有”のあり方とは

不動産の情報を探していると、「このエリアでこの価格!?」と思わず二度見してしまうような物件に出会うことがあります。特に都心部で見かける“定期借地権マンション”は、相場よりもかなり手頃な価格で販売されており、魅力的に映る方も多いでしょう。
しかしその安さには理由があり、将来的な資産価値や住まいとしての寿命において、しっかりと理解しておきたいポイントがあります。

この記事では、「定期借地権マンションとは何か?」という基本から、メリット・デメリット、購入時の注意点までを分かりやすく解説していきます。

定期借地権マンションとは?“土地を借りて建てる”という仕組み

定期借地権マンションとは、「土地の所有権は持たず、一定期間だけその土地を借りて建てられたマンション」のことです。
この制度は1992年(平成4年)に始まり、バブル崩壊後の土地活用を進める目的で作られました。大きな特徴は、契約に“期限”があるという点です。住まいとしての利用期間は最低でも50年と定められており、契約の更新はできません。
期間が満了すると、マンションは解体され、土地は更地の状態で地主へ返す必要があります。つまり、一生住み続ける家ではないという前提で成り立っているのです。

メリット:手頃な価格と好立地の両立

定期借地権マンションの一番の魅力は、価格が安いことです。
土地を所有しない分、通常のマンション(所有権付き)と比べて3〜4割ほど安くなるケースもあり、都心の一等地でも「予算内で購入できる」可能性が広がります。
立地重視で、長期間住めれば十分という方にとっては、非常に魅力的な選択肢となります。

デメリット:期限・コスト・資産価値の減少

一方で、定期借地権マンションには見逃せないデメリットも存在します。

所在不明共有者の権利制限制度の創設

  1.  契約期限がある

    50年などの期限が切れると、その土地には住み続けられません。建物は取り壊され、土地を地主に返す決まりがあります。自分の資産として残せない点は、所有権付きマンションとは大きな違いです。

  2.  実は月々の費用が高くなることも

    購入時には、地主への“権利金”が発生する場合があり、さらに月々の“地代”も支払います。固定資産税のうち土地分は不要ですが、解体費用を積み立てる「解体準備金」などもあるため、長い目で見ると維持コストがかさむことがあります。

  3.  資産価値が年々下がる

    残りの借地期間が短くなるほど、中古としての価値が下がっていきます。築30年を超え、残存期間が20年程度になると、「次に買ってくれる人」が見つかりにくくなり、実質的には売却が困難になります。

投資ではなく“住みつぶす”という選択肢

期借地権マンションは、資産価値が上がることを期待する投資用物件ではありません。そのため、購入者の多くは「自分が住んで満足できればOK」という“住みつぶす”前提で考えている方が中心です。
新築で売り出された際には人気物件になることもありますが、年数が経つほど売却は難しくなります。将来の買い替えや相続を考える場合は注意が必要です。

修繕の課題:解体前提の建物にお金はかけにくい

定期借地権マンションでは、管理や修繕に対する住民の意欲が低くなりがちです。
なぜなら、いずれ解体されることが分かっているからです。大規模修繕が必要になっても「あと20年で取り壊す建物にそこまでお金をかける必要はない」と考える人が多く、管理組合での合意形成が難しくなることがあります。
その結果、建物の老朽化が進み、快適に住めなくなるリスクもあります。

若い世代こそ慎重に!将来の売却リスクを理解する

「50年住めるなら問題ない」と考える高齢者の方も多くいますが、30代〜40代の若い世代が購入する場合は特に慎重な判断が必要です。
たとえば、10年後にライフステージの変化で住み替えをしたくなった場合、残りの借地期間が短いほど売却は難しくなり、場合によっては希望価格で売れない、または買い手がつかないこともあります。

まとめ:定期借地権マンションは“目的”が明確ならアリ

定期借地権マンションは、その仕組みを正しく理解すれば、特定のニーズにマッチする魅力的な選択肢となり得ます。

  • 都心の好立地に住みたい
  • 50年程度の居住期間で十分
  • 将来的に売却・相続を考えない

このような条件に合致する場合は、非常にコストパフォーマンスの良い住まいになるでしょう。
ただし、将来のライフプランや売却、相続などを見据えるなら、専門家(不動産会社・弁護士・税理士など)に相談した上で判断することが大切です。安さだけに飛びつかず、仕組みを理解して納得のいく選択をしましょう。

この記事を書いた人

高島 亮 宅地建物取引士 ・住宅ローンアドバイザー ・既存住宅アドバイザー