2026年4月から施行!不動産の「住所等変更登記」義務化について

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不動産の「住所等変更登記」義務化の背景と全体像

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2026年(令和8年)4月1日より、不動産の所有者に対する「住所等変更登記の義務化」が施行されました。これまで、引っ越しによる住所変更や結婚等による氏名変更があった際、法務局が管理する登記簿を更新するかどうかは所有者の任意とされてきました。しかし今後は、氏名や住所に変更が生じた日から「2年以内」に変更登記を申請することが法律上の義務となります。

今回の法改正の背景には、日本全国で深刻な課題となっている「所有者不明土地問題」が存在します。所有者が直ちに判明しない、あるいは連絡がつかない土地の増加は、災害時の復旧工事の妨げになるほか、放置された空き家による倒壊リスクなど、社会的な弊害を生み出しています。この国を挙げた課題を解消するため、2024年に開始された「相続登記の義務化」に続き、今回の住所等変更登記の義務化もスタートしました。

制度の重要なポイント
  • 対象者:原則として不動産を所有するすべての個人および法人(法人の本店移転や商号変更も対象)
  • 申請の期限:住所や氏名に変更があった日から「2年以内」
  • 過去の変更履歴:2026年4月1日の施行日より前に生じた変更についても対象。この場合、施行日から2年以内(2028年3月31日まで)に申請が必要
  • 未申請への罰則:正当な理由なく申請を怠った場合、5万円以下の過料の対象となる

マイナンバー制度が普及した現在においても、役所に転居届を提出すれば法務局の登記情報が自動的に書き換わるわけではありません自らの資産情報を自らの手で最新状態に保つ意識が求められます。

「売却時にまとめて手続き」が招くリスクと実務への影響

義務化以前の不動産取引においては、住所変更登記は「物件を売却する時」や「金融機関から融資を受ける時」など、どうしても必要になるタイミングに合わせて司法書士へ依頼し、まとめて手続きを行うケースが一般的でした。しかし義務化がスタートした現在、手続きを後回しにする姿勢は思わぬ手間や遅れの原因となります。とりわけ、賃貸物件や投資用不動産を保有するオーナー様にとって、実務への影響は以下の3つの場面で現れやすくなります。

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影響①:所有権移転登記が進まないリスク

物件の売却時、現在の所有者から買主へ名義を変更する「所有権移転登記」を行うためには、重要な前提条件があります。それは、登記簿上に記録されている売主の住所・氏名と、現在の売主の住所・氏名(印鑑証明書等で確認できる最新情報)が一致していることです。この一致が確認できなければ、そのままでは名義変更の手続きを進めることができず、事前に住所変更登記を行う手間がかかります。

影響②:決済・引き渡しの遅延リスク

もし、代金決済の直前になって前述の住所不一致が発覚した場合、まずは事前の住所変更手続きを完了させる必要があります。通常は事前の確認で発覚するため大事には至りませんが、直前で手続きが必要になるとスケジュールが後ろ倒しになり、買主や関係者に迷惑をかける恐れがあります。

影響③:融資や資金調達への影響

影響は売却時だけにとどまりません。金融機関からの借換え融資や、リフォーム等に伴う追加担保設定を行う場面においても、登記情報が古いままであることは問題となります。情報の不一致は金融機関の審査や手続きを遅らせる原因となり、スムーズな資金調達の妨げになる可能性があります。

これまでのように「必要な時にまとめて対応する」という事後対応の考え方は、手続きの遅れや余計な手間を招くリスクへと変化しています。

転居歴の多い方は要注意。複雑化する書類収集とこれからの資産管理

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住所変更の手続きにおいて、実務上最も時間と労力を要するのが「書類収集」のプロセスです。複数物件を長期間保有し、その間に何度かの引っ越しを経験されている方は、特に以下の3つの問題点に注意を払う必要があります。

問題①:住所履歴の連続性を証明する難しさ

登記の変更申請は、単に現在の住民票を提出すれば完了するわけではありません。原則として、登記簿に記載されている古い住所から、現在の住所に至るまでのすべての履歴が途切れることなく繋がっていることの証明が求められます。これには、住所の移り変わりが記録された「戸籍の附票」や、「住民票の除票」といった公的な書類を揃えなければなりません。

問題②:書類取得を阻む「保存期間の壁」

履歴を証明しようとした際、実務上の障壁となるのが役所における書類の保存期間です。かつて住民票の除票などの保存期間は「5年」と短く定められていました。現在は法改正により保存期間が延長されていますが、すべての自治体で完全に過去分が残っているとは限らず、古いものはすでに廃棄済みのケースも多々存在します。

問題③:例外対応に伴う時間と専門的な労力

もし保存期間の壁に阻まれ、公的な書類だけで過去の履歴が証明できない場合でも、手続きが不可能になるわけではありません。しかし、不動産の権利証(登記識別情報)を追加で提出したり、上申書を作成したりするなどの例外的な手続きが必要となります。こうしたイレギュラーな対応は専門的な判断を要することが多く、通常よりも準備期間や労力がかかってしまいます。

まとめ

過去の履歴を放置すればするほど、書類収集のハードルは上がり続けます。今後は「売るときに直す」のではなく、「変更があれば速やかに整備する」ことが資産管理の基本原則です。
不動産経営は、建物の維持管理や収支の最適化といった側面に加え、権利関係の整備をタイムリーに行う総合的なマネジメントへと移行しています。管理会社や司法書士と連携し、定期的に登記事項証明書を取得して現状を確認する体制を構築することが、将来の円滑な売却や資金調達、ひいては賃貸経営の安定的な継続へとつながります。

この記事を書いた人

廣瀬 大輔 宅地建物取引士・既存住宅アドバイザー・消防設備士乙種第6類・第1種消防設備点検資格者・第2種消防設備点検資格者

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