「部屋」だけでは決まらない!売却時、建物全体で見るべきポイントとは

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マンションの売却や住み替えを考えるとき、多くのオーナー様がまず気にされるのは「自分の部屋はいくらになるか」です。内装のきれいさ、日当たり、階数。ポータルサイトに並ぶ写真も、ほとんどがお部屋の中の様子です。お子さまの進学に合わせた住み替え、親世帯との近居、相続した住戸の整理など、きっかけはさまざまですが、判断の軸は共通しています。

ただ、買主が見ているのは部屋だけではありません。エントランスの手入れ、掲示板の様子、修繕の進み方、同じマンションで過去にどれだけ取引があるか。部屋をいくら丁寧に整えても、建物全体の印象が弱ければ、査定も売出価格も伸びにくくなります。住み替えを検討されている方、相続した住戸の売却を考えている方、どちらにも共通するのが、「部屋」ではなく「棟」で見るという視点です。査定額が想定より低かったとき、原因は室内の傷ではなく、棟の流通性や管理にあることも少なくありません。

マンションは部屋だけでなく建物全体で見る

売り出しが多いマンションほど、実は買い手がつきやすい

「よく売られている」は、悪い兆候ではない

「同じマンションでよく売りに出ている=何か問題があるのでは」と感じる方は少なくありません。現場の感覚では、その判断は逆であることが多いです。

過去に売り出しや成約が積み重なっているマンションは、買主が価格の目安をつかみやすく、住宅ローンを組むときの担保評価も安定しやすい傾向があります。同じ駅徒歩圏で、似た広さ・似た築年の住戸がここ数年で何度か取引されていれば、「この値段なら妥当だ」と判断しやすいからです。

反対に、ここ10年ほとんど動いていないマンションは、売主にとっても買主にとっても根拠が乏しくなります。室内をリフォームして見栄えを整えても、比較対象が少なければ値付けが難しく、内見のあとに「もう少し様子を見たい」と保留されやすいのです。ひとつの目安として、同じ棟で直近3年に複数の成約があるかどうかを確認されることをおすすめします。

売却を急いでいない段階でも、同じ棟の過去の売り出し価格と、実際に決まった価格の差を見ておくと安心です。希望価格のまま長く止まっている住戸が多い棟は、買主から「強気すぎる」と見られやすい一方、成約が定期的に出ている棟は、相場に沿った値付けがしやすいからです。たとえば、同じ70㎡前後の住戸が直近で5,800万円前後で決まっている棟なら、6,400万円で出しても内見は入っても、価格交渉が長くなりがちです。反対に、取引の少ない棟で「近所の新築がこの値段だから」と合わせると、根拠が弱く見られます。不動産会社に査定を依頼するときは、部屋の状態だけでなく、「このマンション自体が、いまどれくらい動いているか」まで説明してもらうと、売出価格の根拠がはっきりします。

最寄り駅が同じでも、マンションごとに評価は分かれる

同じ駅でもマンションごとに評価は分かれる

将来の売却を見据えた「相対評価」

部屋が気に入っている、あるいは今の住まいを高く売りたい。そのとき次に見るべきは、同じ最寄り駅の別のマンションと比べて、自分の棟がどの位置にいるかです。

たとえば、ある駅から徒歩8分の2棟。広さも築年も大きくは違わないのに、成約単価に1割以上の差がつくことがあります。理由は立地のわずかな違いだけではありません。管理の丁寧さ、大規模修繕の実施履歴、周辺の印象。買主は「この駅ならこのマンション」という順番で絞り込むことが少なくありません。

売却を急がない段階でも、近隣の成約事例や売り出し中の物件を並べておくと、自分の住戸の立ち位置が見えてきます。国土交通省の不動産取引価格情報や、東日本不動産流通機構(レインズ)が公開するマーケット情報、不動産会社が持つ近隣の成約データが手がかりになります。個別の取引相手は分からなくても、「同じ駅・近い広さ・近い築年」でいくらで決まっているかは把握できます。

部屋をきれいに保つ、水回りを直す。それ自体は悪いことではありません。ただ、棟全体の評価が低いと、リフォーム費用を価格に転嫁しきれないことがあります。たとえばキッチンと浴室を合わせて250万円かけて整えても、同じ駅の別棟より単価が弱いマンションでは、その全額を売値に上乗せできるとは限りません。売却前に「部屋への手入れ」と「棟の実力」を分けて考えると、お金の使い方の後悔が減ります。住みながら売る場合は、最低限のクリーニングと目立つ傷の補修にとどめ、大規模な改装は買主の好みに任せる判断もあります。

買主の目線でも同じことが起きます。内見ではお部屋の印象が良くても、帰宅してから同じ駅の別マンションと比較し、管理や流通の差で候補から外れるケースは珍しくありません。角部屋で日当たりが良くても、同じ駅の別棟のほうが修繕履歴が明確で、直近の成約も多い、と分かると、検討順位は入れ替わります。オーナー様としては、自分の部屋の良さだけでなく、棟としての選ばれやすさまで含めて相場を見る必要があります。駅からの距離が同じでも、踏切や坂の有無、スーパーまでの動線で評価が分かれることもあります。図面の「徒歩○分」だけでなく、実際の歩きやすさまで含めて、近隣棟との差を確認しておくと安心です。

戸数が少ないマンションで起きやすいこと

世代が揃うと、管理の担い手が細る

住戸が広い、隣が静か。総戸数が少ないマンションには、暮らしやすさの面で魅力があります。一方で、売却や管理の場面では注意点もあります。

わかりやすいのが、居住者の年齢構成です。分譲当初に同じ世代が入居し、その後あまり住み替えが起きないと、十数年後に世帯の年齢が揃って高くなることがあります。介護が必要になってから相続・売却まで時間が空くと、その間に管理費(日常の維持にかかる費用)や修繕積立金(将来の大規模修繕に備える積立)の滞納が目立ち始めるケースもあります。

総戸数が90戸、120戸と多ければ、数戸の滞納があっても組合の運営は続きやすいです。これが20戸前後だと、1戸の未納が全体に与える影響は大きくなります。理事会の担い手も限られ、総会が形骸化すると、必要な修繕の決議が遅れがちです。売却時には、買主側の不動産会社がこの点を必ず確認します。滞納が目立つ棟は、価格交渉の材料になりやすいのが実情です。住み替えで売る場合でも、「自分がきちんと払っているから大丈夫」とは限りません。組合全体の滞納額は、重要事項調査報告書に記載されることが多く、買主はそこを見て判断します。

臨時の工事費は、戸数が少ないほど重くなる

災害や設備の故障で臨時の工事が必要になったときも同様です。仮に共用部の補修に1,800万円かかるとします。90戸なら1戸あたり20万円程度。20戸なら90万円です。この差は、次の買主が「買ってからの負担」として気にするポイントでもあります。

エレベーターの部品交換や給水管の更新のように、築年が進むほどまとまった支出は増えます。戸数が少ないほど、一回あたりの負担感は強く出ます。大規模修繕の直前に売り出すと、一時金の話が出て買主が慎重になることもあります。逆に、直近で工事が終わり、積立金の残高も回復しているタイミングは、説明がしやすいことが多いです。売却を考えるときは、部屋の広さだけでなく、組合の財政、滞納の有無、直近の総会議事録を確認しておきたいところです。これらは重要事項調査報告書(管理会社が発行する、管理の状況をまとめた書類)で把握できます。居住中のオーナー様でも、管理会社経由で取得できることがほとんどです。

売却前に、棟単位で確認しておきたいこと
  • 同じマンションの直近の売り出し・成約の有無
  • 最寄り駅が同じ他マンションとの価格差
  • 総戸数と、管理費・修繕積立金の滞納状況
  • 長期修繕計画と、直近の大規模修繕の実施状況
  • 旧耐震か新耐震か、耐震診断の有無
  • 総会議事録や重要事項調査報告書の内容

室内の印象は内見で伝えられますが、上記は書類と建物全体を見ないと分からない項目です。査定を依頼する前に一度整理しておくと、売出価格の根拠も説明しやすくなります。特に相続で取得した住戸の場合、前の所有者が管理組合の運営にどこまで関わっていたかが分かりにくいこともあります。書類を揃えるところから不動産会社に相談すると、漏れが少なくなります。管理規約でペットやリフォームに制限があるかどうかも、買主が気にする点です。売却前に把握しておくと、問い合わせへの返答がスムーズになります。

部屋では変えられないこと──耐震と管理

ポータルサイトの写真がきれいで、内見の印象が良い。それでも、建物の耐震性は住戸単位ではどうにもなりません。
1981年(昭和56年)6月より前の旧耐震基準のマンションは、震度6強〜7クラスを想定した現行の基準とは考え方が異なります。住人がどれだけ地震に備えていても、耐震診断や補強は管理組合の合意がなければ進められません。価格が魅力的に見えても、将来の買主や住宅ローンの審査で敬遠され、売却期間が長引くことがあります。

エントランスや管理状態が売却に与える印象

「安く買った(安く売れる)旧耐震なら、リフォームで十分」と考える方もいらっしゃいます。室内の更新は暮らしやすさにはつながりますが、構造の評価は別物です。買主が住宅ローン控除などの税制優遇を使いたい場合、旧耐震では要件を満たしにくいこともあります。結果として、室内がきれいでも、検討の土俵に上がりにくいという事態が起き得ます。売却を急ぐ事情があるときほど、棟の耐震区分は早めに確認しておきたい項目です。建築確認の日付は、登記や分譲時のパンフレット、管理会社への確認で分かる場合があります。築年の見た目と、実際の基準は一致しないこともあるため、完成年だけで判断しないほうが安全です。

管理の質も同じです。ゴミ置き場、郵便受け、掲示物の更新。内見に来た方がエントランスで感じる印象は、室内のリフォームでは打ち消しきれません。大規模修繕が予定どおり進んでいるか、積立金の残高は計画に見合っているか。オーナー様ご自身が住んでいる場合でも、日常では気づきにくい部分です。週に一度、共用部を第三者の目で歩いてみると、「いつも見慣れているから気にならない汚れ」に気づくことがあります。

内見当日、買主は共用部も見ている

室内の片付けやハウスクリーニングに気を配るオーナー様は多い一方、共用部は「自分では変えられない」と後回しになりがちです。実際の内見では、エントランスから部屋までの動線で印象が決まります。自転車置き場の乱れ、掲示板の古いお知らせ、照明の切れ、宅配ボックス周りの荷物。こうした細部は、買主が「このマンションは大事にされているか」を測る材料になります。

管理会社や理事会に、内見前の清掃強化や掲示物の更新を相談できるケースもあります。個人でできる範囲は限られますが、「共用部が雑然としている棟」と「整っている棟」では、同じ室内でも感じ方が変わります。売却活動が長引いているときは、室内写真の差し替えだけでなく、建物全体の第一印象も一度見直してみてください。曜日や時間帯を変えて内見を入れると、騒音や人の流れも伝わります。平日の朝と週末の昼では、買主の印象が変わることもあります。

売却を具体的に考える前に、まずは「この棟は、同じ駅のほかのマンションと比べてどうか」を整理してみてください。部屋の魅力は、棟の土台があって初めて価格に反映されます。内装を整える前に、流通の有無・近隣棟との単価差・総戸数と組合の健全さ・耐震区分、この四点を確認するだけでも、売出計画はかなり現実的になります。ご自宅マンションの売却や、建物全体の評価の見極めについてお悩みの際は、ウィル・ビーまでお気軽にご相談ください。

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