2026年4月施行「改正区分所有法」マンションオーナーが知っておきたい新ルール
- 賃貸管理
2026年4月1日、改正区分所有法が施行されました。区分所有法は、マンションの各住戸の所有者の権利や、建物を共同で管理するためのルールを定める法律です。
今回の改正では、マンションの管理や再生を進めるための意思決定の仕組みが見直されるとともに、建替え以外の再生方法にも選択肢が広がりました。[出典1]
賃貸オーナー様にとっても、将来の資産価値や売却、賃貸経営に関わる改正です。建物全体の修繕や再生は、一室の所有者だけで決められるものではありません。
なぜ今、マンションの意思決定ルールが変わったのか
築年数とともに、建物を支える人の事情も変わる
国土交通省の推計によると、築40年以上の分譲マンションは2025年末時点で約158.8万戸、2035年末には約313.1万戸へ増える見込みです。[出典2]既存の建物をどのように維持し、将来につないでいくかは、多くの所有者に共通する課題となっています。
老朽化に伴う修繕が必要になる一方、所有者・居住者の高齢化や相続、賃貸化によって、資金の余裕や保有方針は一様ではありません。異なる事情を調整しながら判断を進める仕組みが求められてきました。
「家賃が入っているから安心」とは言い切れない理由
区分マンションでは、自分の住戸だけでなく、廊下や外壁、エントランスなどの共用部分をほかの所有者と共同で維持していきます。室内をきれいにリフォームしていても、建物全体の耐震性や配管の劣化、修繕資金の不足といった問題まで解決できるわけではありません。
近い将来に大きな費用負担が見込まれるのであれば、現在の家賃収入だけでは収益性を判断できません。
保有を続ける場合も、売却を検討する場合も、建物の状態と管理組合の方針を把握しておくことが大切です。
建替えだけではない 広がったマンション再生の選択肢
売却・取壊し・建物更新を多数決で進める制度を整備
今回の改正では、従来からある建替えに加えて、マンションを再生したり区分所有関係を解消したりするための新たな仕組みが整備されました。
従来も一定のマンションを対象とする売却制度などはありましたが、今回の改正によって、複数の再生方法を比較できる枠組みが広がりました。
なお、建物の取壊しだけを決めても、その後の敷地の利用方法や売却まで自動的に決まるわけではありません。取壊し後の土地の方針まで確認する必要があります。
選択肢が増えても、事業の採算は別に確かめる
制度上の選択肢が増えても、どの方法が実現しやすいかはマンションごとに異なります。立地、建築上の制限、建物の状態、工事費、買い手の有無など、多くの条件が影響します。
建替えであれば所有者の追加負担や完成までの期間、一括売却であれば受け取れる金額や転居の条件、建物更新であれば工事範囲や改修後に使用できる期間などを比べる必要があります。
また、大規模な再生だけを前提にするのではなく、修繕を重ねて使い続ける場合とも比較することが大切です。
「5分の4から4分の3へ」の意味を正しく理解する
所有者の人数と議決権は、別々に数える
建替え決議は、原則として区分所有者と議決権の各5分の4以上の賛成が必要です。[出典1]
ここで注意したいのは、所有者の人数だけで決まるわけではないことです。管理規約などに基づく議決権についても要件を満たす必要があるため、「全住戸の8割」と単純には考えられません。
さらに、建物と敷地の一括売却などでは、敷地の権利の持分に応じた賛成割合も要件に加わります。
[出典3]
議案によって必要な条件が異なるため、管理組合から届く資料では、決議の名称と必要な賛成割合を確認しましょう。
築年数だけで、決議要件が緩和されるわけではない
建替えなどの決議要件は、建物に一定の客観的な事由が認められる場合、各5分の4以上から各4分の3以上へ緩和されます。
対象となるのは、地震や火災に対する安全性の不足、外壁などの落下によって周囲に危害を及ぼすおそれ、給排水管の損傷・腐食、バリアフリー基準への不適合などです。[出典4]
つまり、築年数だけで4分の3になるわけではありません。対象となる事由に該当するかどうかは、建物の調査や診断結果を踏まえて確認する必要があります。
また、管理規約の変更などについては、原則として区分所有者数と議決権の各過半数の出席を前提に、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上で決める仕組みに変わりました。
一方、建替えなど建物の将来を大きく変える再生決議は、原則として区分所有者全体を基準に判断します。管理の決議と再生の決議はルールが異なります。[出典1][出典4]
賃貸オーナーが今、確認しておきたい資料と契約
修繕積立金の残高だけでなく、議論の進み具合を見る
まずは、管理組合やマンションの管理会社を通じて、建物全体の状況が分かる資料をそろえてみましょう。月々の管理費や修繕積立金を支払っていても、それだけで将来の資金が十分かどうかは判断できません。
- 長期修繕計画:工事の予定時期、見込額、計画を見直した時期
- 修繕積立金の収支:現在の残高、計画上の不足、値上げや一時金の検討状況
- 総会の議案書・議事録:建替えや売却の検討状況、専門家への調査依頼、決議の有無
- 建物の診断資料:耐震性や配管などの状態、指摘事項への対応状況
特に、「勉強会を始めた段階」と「具体的な事業計画を検討している段階」では、オーナー様が準備すべきことも変わります。
大きな室内改修や売却を決める前に、管理組合の動きと自分の計画を照らし合わせることが大切です。
現地に住んでいない場合は、管理組合に届けている連絡先や資料の送付先も確認したいところです。総会へ足を運べなくても、議案を読み、議決権行使書などを通じて意思を示し、建物の将来を決める話し合いに関わることが大切です。
入居者との契約や、家賃が途切れる期間も見込んでおく
賃貸オーナー様が押さえておきたいのが、建替え決議などが行われた場合の賃貸借終了請求の制度です。
所定の終了請求が行われると、その請求があった日から6か月が経過することで賃貸借が終了する仕組みが設けられました。ただし、決議だけで直ちに退去となるわけではありません。[出典1]
また、この制度によって賃貸借を終了する場合、賃貸している区分所有者は、契約終了によって入居者に通常生じる損失について補償金を支払う必要があります。入居者は、補償金の提供を受けるまで専有部分の明渡しを拒むことができます。[出典1]
実際に再生計画が具体化した場合は、管理組合や弁護士などの専門家と手続きや補償の見通しを確認しながら、入居者への説明を進めることが重要です。
建替えなどが現実的な検討段階に入ったら、新たな入居募集や契約更新についても賃貸管理会社へ相談し、家賃収入が途切れる期間も見込んでおくようにしましょう。借入金がある場合は、その返済も含めて資金計画を見直す必要があります。
まとめ
改正区分所有法を踏まえて確認しておきたいポイント
- 建替えだけでなく、売却・取壊し・建物更新など再生の選択肢が広がった
- 決議要件の緩和には条件があり、築年数だけで4分の3になるわけではない
- 長期修繕計画や総会議事録を確認し、マンション全体の方針を把握する
- 賃貸中の場合は、入居者への補償や家賃収入が途切れる期間も資金計画に含める
区分マンションの賃貸経営では、室内や毎月の家賃だけでなく、「一棟全体」の将来にも目を向けることが重要です。
今回の改正によってマンション再生の選択肢は広がりましたが、どの方法が適しているかは建物の状態や管理組合の方針、費用などによって異なります。
まずは総会議事録や長期修繕計画を確認し、建物の将来とご自身の計画を照らし合わせることから始めてみてはいかがでしょうか。
ウィル・ビーでは、区分マンションの賃貸管理や売却など、オーナー様のご事情に合わせたご相談を承っています。
建物全体の動きを踏まえながら、今後の保有方針や賃貸経営について一緒に考えていきます。
出典・参考資料
[出典1] 国土交通省「マンション再生実務マニュアル」(2026年3月改訂)
参照箇所:序章「本マニュアルの枠組み」、第1章「マンション再生の基本と進め方」、第2章2.2.3「建替え決議等の成立要件と決議において定めるべき事項」、2.2.5「賃貸借の終了請求等の手続き」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001994101.pdf
[出典2] 国土交通省「築40年以上のマンションストック数の推移」(2025年末時点)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001903887.pdf
[出典3] 国土交通省「マンション等売却実務マニュアル」(2026年3月)
参照箇所:第1章「マンション等売却事業の基本と進め方」、第3章3.1「区分所有法に基づく売却決議」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001993402.pdf
[出典4] 国土交通省「令和7年度 マンション管理適正化シンポジウム パネルディスカッション 標準管理規約改正! 管理規約を見直さないと、どうなる?」
参照箇所:「区分所有法改正のポイント」「総会決議における多数決要件の見直し」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001971535.pdf
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