サステナブル素材とは?これからの住まい選びを考える
- 賃貸管理
家具や住宅設備を選ぶとき、価格やデザインとともに「何から作られているか」にも目を向けてみませんか。石油由来のプラスチックの使用を減らすため、植物などの資源を生かす素材の開発が進められています。
サステナブル(持続可能)な住まいづくりは、こうした素材の特徴を知ることから始められます。バイオプラスチックの基礎や「kinari(キナリ)」の取り組みを通じて、環境への配慮と暮らしやすさを両立する選び方を考えてみましょう。
「植物由来」と「分解される」は、異なる特徴
バイオプラスチックに含まれる二つの考え方
バイオプラスチックは、植物などの再生可能な資源を原料とする「バイオマスプラスチック」と、微生物の働きで最終的に二酸化炭素と水にまで分解される「生分解性プラスチック」の総称です。前者は原料、後者は分解する性質に着目した呼び方で、両方の特徴を持つものもあります。
植物由来であっても、自然の中で分解されるとは限りません。また、生分解性でも、分解には適切な温度や微生物などの条件が必要です。海に流れ出ても問題がないという意味ではなく、使い終えたら製品や自治体の案内に従って処分することが基本です。[出典1]
環境への効果は、素材の名前だけでは決まらない
こうした素材が注目される背景には、地球温暖化や海洋プラスチックごみへの対策があります。ただし、それぞれの素材が得意とする役割は異なります。石油への依存を減らすことと、自然環境に流出した際の影響を抑えることは、分けて考える必要があります。
CO2排出量を比べる場合も、原料の栽培・調達から製造、輸送、使用、廃棄までを通して評価する視点が欠かせません。国のロードマップも、こうした製品の一生を通じた環境面の検証を重視しています。[出典2]
「植物由来だから安心」と判断せず、何を改善する素材なのかを知ることが、納得できる選択につながります。
国の導入目標と、身近な製品から進む素材の転換
2030年に約200万トンを目指す取り組み
日本政府の「バイオプラスチック導入ロードマップ」は、2030年までにバイオマスプラスチックを最大限約200万トン導入する目標の実現に向けて策定されました。対象は、バイオプラスチック全般ではなく、バイオマスプラスチックです。[出典2]
一方、2026年8月の環境省・経済産業省の合同会議では、国内のバイオマスプラスチック製品の流通量は約21万トンと報告されています。過去10年で増加が見られるものの、目標には隔たりがあり、主にレジ袋やごみ袋が増加を支えている状況です。[出典3]
素材の転換は、すでに全面的に進んでいるのではなく、用途ごとに広がっている段階といえます。
住まいで使うには、耐久性や価格との両立も必要
普及を進めるには、原料を安定して確保し、製造コストを抑えることが課題になります。さらに、製品に求められる強度や耐熱性、使い終えた後のリサイクルとの相性も確かめなければなりません。国のロードマップでは、原料の多様化や製造技術の開発も推進事項に挙げられています。[出典2]
長く使う住宅設備では、環境面の特徴に加え、日常の手入れや部品交換のしやすさも選ぶ基準になります。購入時の価格とともに、維持するための費用や手間まで見通すことが大切です。
植物由来の複合素材「kinari」が広げる可能性
機能性・デザイン性・資源活用に見る三つの特徴
植物資源を生かす素材開発の一つが、パナソニックグループの「kinari」です。植物の細胞壁を構成する繊維「セルロース」を高い割合で樹脂に混ぜ、成形できるようにした複合素材です。主な特徴は、次の3点に整理できます。
- 機能性:セルロースの配合によって、従来の石油由来樹脂と比べて軽さや強さを高めることができます。
- デザイン性:形や色の自由度があり、原料が持つ色や風合いを生かした仕上がりにも対応できます。
- 資源の活用:間伐材や古紙、コーヒーかすなど、さまざまな植物由来の原料を活用できる可能性があります。[出典4]
※植物由来の資源(ウッドチップ)のイメージ写真です。
役目を終えたものや捨てられていたものに、新たな用途と価値を与えるのが「アップサイクル」の考え方です。使える資源の幅が広がれば、廃棄物を材料として見直すきっかけにもなります。実際に採用する原料や配合率は製品ごとに確認し、その素材が選ばれた理由まで知ると、製品への理解も深まります。
暮らしへの活用例として登場した照明
kinariの活用例の一つが、2026年6月に発売された「S-story(エスストーリー)ペンダント」です。光源を覆うかさの部分にkinariを採用し、その材料重量の約50%にセルロースを使用しています。石油由来樹脂100%の場合と比べ、かさに使う石油由来樹脂の量を半減しています。
成形時に生まれるマーブル模様は一台ごとに異なり、点灯すると素材を通して光が広がります。使う年月とともに色合いが変化する点も特徴です。[出典5]
素材の置き換えを、製品ならではの表情や楽しみ方につなげた事例といえるでしょう。
暮らしに合う素材を選ぶために、確かめたいこと
原料だけでなく、使い続けやすさにも目を向ける
素材を比較するときは、環境への配慮が製品のどこに表れているのかを確かめましょう。商品説明や店頭では、次の3点を確認すると、特徴を整理しやすくなります。
- 原料と配合率:どの部品に、どの材料が、どれくらい使われているか。
- 性能と手入れ:用途に必要な丈夫さや耐熱性があるか。日々の掃除や修理に対応できるか。
- 使い終えた後:分別方法や回収窓口が分かるか。リサイクルの案内が用意されているか。
削減率が示されている場合は、何と比較した数値かも確認します。「植物由来」の割合だけで優劣を決めず、実際の使い方に必要な性能も合わせて判断することが大切です。現物やサンプルで手触りや重さ、家具や内装とのなじみ方を確かめると、暮らしの中で使う姿を想像しやすくなります。
住み替えや買い替えを、素材を見直す機会に
住宅購入やリフォームでは、今ある家具や設備の状態を確認し、残して使えるものと交換が必要なものを整理しましょう。工事が必要な設備は、設置費まで含めた見積もりを取り、予算に合う候補を比べます。「故障時にはどこに相談できるか」「交換できる部品は何か」も聞いておくと、購入後の対応まで見通せます。
家族と候補を比べる際には、見た目や価格に加え、掃除にかけられる時間や、どのくらい長く使いたいかも話してみてください。環境への関心を、家族が無理なく使い続けられる条件と結び付けることで、選ぶ基準が具体的になります。
まとめ
サステナブル素材を住まいに取り入れる第一歩は、原料の特徴と、製品としての使いやすさを知ることです。kinariのような取り組みからは、資源の使い方を見直しながら、機能やデザインも工夫できる可能性が見えてきます。
今あるものを大切に使い、必要な買い替えの際に、候補の一品の素材を確かめる。その小さな選択を積み重ねることが、自分たちの心地よさと次の世代に残す環境を考える、無理のない住まいづくりにつながります。
出典一覧
[出典1] 環境省「バイオプラスチックとは?」
バイオプラスチックとは?
[出典2] 環境省・経済産業省・農林水産省・文部科学省「バイオプラスチック導入ロードマップ」(2021年1月)
バイオプラスチック導入ロードマップ(PDF)
[出典3] 環境省・経済産業省「プラスチック資源循環に関する合同会議(第12回)」議事録(2026年8月21日)
プラスチック資源循環に関する合同会議(第12回)議事録
[出典4] パナソニック プロダクションエンジニアリング「kinari ― 高濃度セルロースファイバー成形材料」
kinari ― 高濃度セルロースファイバー成形材料
[出典5] パナソニック「高濃度セルロースファイバー成形材料『kinari(キナリ)』を採用した照明器具『S-story(エスストーリー)ペンダント』を発売」(2026年3月6日)
「S-story(エスストーリー)ペンダント」発売のプレスリリース
※情報確認日:2026年10月5日
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