古くなった設備の修理は難しい?メーカー対応不可の理由とは

  • 賃貸管理

よくある問題として、製造から10年以上が経過した室内設備は、メーカーが修理を受け付けない、または修理の受付を終了してしまっているということがあります。
古くなった設備の場合、オーナー様としては交換よりも修理を選び、費用を抑えたいというご希望もあるでしょう。しかし、なぜ修理ができないのでしょうか。それには、賃貸特有の理由やメーカー側の都合が存在します。
今回は、その理由について詳しく解説します。さらに、賃貸物件の設備を含めた一般的な製品の現状と、賃貸物件の設備維持・管理の考え方についてもお伝えします。

1.補修用部品の在庫には保管期限がある

メーカーで古くなった設備の修理ができない・受け付けられない理由のひとつとして補家電修用部品の在庫保管期限があります。

メーカーでは製品について、一般的に安全に使用できる「耐用年数」を設定します。この「耐用年数」に基づき、補修用部品の在庫保管期限が決定されます。
この耐用年数や補修用部品の在庫保管期間は、全国家庭電気製品構成取引協議会の「製造業表示規約」に基づいて各メーカーで、設定されています。 この期間を超過した製品は、補修用部品がないなどの理由で修理ができないという状況が生じます。
日々、メーカーは製品の性能や機能を向上させ、新しい高機能な製品を市場に送り出しています。このような在庫保管期限の設定をすることで、所有者に対して定期的な設備の交換や更新を促し、経年劣化や事故発生の防止に努めています。
特に問題のない機能でも、古い設備については、メンテナンスの観点から定期的に交換・更新することが必要です。

補修用部品の在庫には保管期限がある
部品保有期間 対象品目
5年 電気ポット、アイロン、ロースター、ヘアカーラー、トースター、電気コンロ
6年 電気洗濯機、電気釜、電気毛布、ズボンプレッサー、ラジオ、開放式石油ストーブ、テープレコーダー、ミキサー・ジューサー、電気あんか、電気カミソリ、電子ジャー、ウィンドファン、電気掃除機、電気コタツ、電気ストーブ、電気パネルヒーター
7年 屋外排気式石油ストーブ
8年 カラーテレビ、電気井戸ポンプ、電子レンジ、白黒テレビ、扇風機、冷風扇、ステレオ、冷水器
9年 電気冷蔵庫、エアーコンディショナー
引用:補修用性能部品表示対象品目と保有期間(全国家庭電気製品公正取引協議会)

2.長期使用製品安全点検・表示制度

また、経済産業省および消費者庁は経年劣化等による製品の不具合・事故防止のために、長期使用製品安全点検・表示制度を実施しています。

長期使用製品安全点検・表示制度

長期使用製品安全点検・表示制度とは、製品を購入した所有者に対して、メーカーや輸入業者から点検の時期をお知らせし、点検を実施することにより、事故を防止するための制度です。
対象となる製品は、所有者による製品のメンテナンスが難しい製品で、「特定保守製品」と呼ばれる製品です。東京ではあまり馴染みがない設備ですが、下記2製品が特定保守製品に指定されています。

①長期使用製品安全点検制度

現在対象となっている特定保守製品は下記のとおりです。

  • 石油給湯器
  • 石油風呂がま

なお、近年の製品の技術的な向上および安全性能装置等の更新により、死亡事故につながる事象が減少傾向にあるため、下記5製品は令和3年の改正で対象から除外されました。

  • FF式石油温風暖
  • 浴室用電気乾燥機
  • ビルトイン式電気食器洗機
  • 屋内式ガス瞬間湯沸器
  • 屋内式ガスふろがま

しかしながら、定期的なメンテナンスや保守管理を怠ると事故につながるリスクは依然として存在するため、他の製品と同様に定期的な点検・更新が必要です。

②長期使用製品安全表示制度

長期使用製品安全表示制度は、経年劣化による重大な事故の発生件数が少なく、所有者が定期的なメンテナンス・保守を比較的容易に実施できる製品が対象となっています。
各製品に以下のような表示がなされており、所有者へ定期的な保守・メンテナンスの注意喚起を促しています。

※表示例(経済産業省 長期使用製品安全点検・表示制度パンフレットより)

②長期使用製品安全表示制度

長期使用製品安全表示制度の対象製品は下記のとおりです。

  • 扇風機
  • 換気扇
  • エアコン
  • ブラウン管テレビ
  • 二槽式洗濯機
  • 全自動洗濯機

3.賃貸物件における設備の維持管理のあり方

賃貸物件の運営では、給湯器、エアコン、換気扇などの機器の維持管理のため、製造年数や耐用年数を把握し、定期的な交換・点検を実施することが大切です。

「まだ使用できるから大丈夫」や「不具合が起きていないから大丈夫」という思考は避けましょう。それでは、突然の不具合のリスクを見過ごす可能性があります。そのようなリスクを前もって想定し、安全表示などを参考にメンテナンスを実施することが求められます。
また、一般的な家電製品においても、適切なメンテナンスや使用方法が重要となります。 経済産業省や消費者庁では、特定の製品だけでなく、一般的な家庭用電気製品やその他の設備についても、リコール(不具合が見つかった製品を製造元が回収すること)情報や重大事故事案などの情報を随時提供しています。
設備の使用方法を誤ったり、家電製品自体に不具合がある場合、それは物件自体への損傷や予想外の事故など、二次的な被害を引き起こす可能性があります。

古くなった設備の修理は難しい?メーカー対応不可の理由とは

大切なこと

これらのリスクを避けるためには、物件オーナーだけでなく、借主側も製品のメンテナンスや使用方法、リコール情報などをチェックし、対策を講じることが求められます。これには、定期的なメンテナンスや維持管理が含まれます。
つまり、賃貸物件の安全性と快適性を維持するためには、オーナーと借主の双方が協力し、互いに責任を果たすことが大切です。
それぞれが製品の適切な使用と管理に努めることで、予期せぬトラブルを未然に防ぐことが可能となります。

この記事を書いた人

田井 捺記 宅地建物取引士・既存住宅アドバイザー・消防設備士乙種第4類

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