特殊詐欺と空き家の深い関係
- 売却
相続した不動産を「そのまま」にしないために
近年、社会問題として取り上げられることが多くなった「特殊詐欺」。手口は年々巧妙化し、行政・警察が取り締まりを強化しているにもかかわらず、被害件数は後を絶ちません。そんな中、近年とくに増えているのが “空き家を悪用した特殊詐欺” です。
「相続してそのまま放置している」「使い道が決まらず、空いた状態が続いている」――そんなごく普通の状況が、思いもよらない犯罪の拠点として利用されてしまう危険性が高まっています。
本コラムでは、なぜ空き家が犯罪に狙われるのか、その背景とリスク、そして所有者が取るべき対策について詳しく解説します。
特殊詐欺グループが空き家を狙う理由
特殊詐欺というと、かつては「オレオレ詐欺」など電話で金銭をだまし取るイメージが強いかもしれません。しかし近年は、犯行手口がよりリアルかつ組織的なものへと変化しています。特に増えているのが、空き家を「犯罪の拠点」として悪用するケースです。
1. 人目につきにくい環境で使われやすい
空き家は普段から出入りが少なく、近隣の目が届きにくい場所。短期間の出入りであっても不審に思われにくいため、犯罪グループにとって非常に都合が良いのです。
2. 身元確認の甘い短期賃貸が狙われる
「短期間だけ使いたい」「倉庫利用」という名目で申し込まれ、偽名や他人名義で契約されるケースも。また、契約後に第三者へ勝手に又貸しされる例も報告されています。
3. 郵便物を受け取れる“住所”として利用
空き家の住所を利用して、
- クレジットカードの受け取り
- 携帯電話やECサービスの契約
- 偽造身分証の製造
など、“犯罪の足場”として使われることがあります。
4. 発覚は近隣トラブルから突然やってくる
空き家の様子を見た近隣住民が不審に感じて通報し、所有者に警察から連絡が入り、初めて犯罪利用が発覚する――というケースも増えています。
所有者に犯罪の意図がなくても、管理していない空き家が“リスクを生む状態”になってしまうことが問題なのです。
相続後の空き家がとくに危険視される理由
相続した実家が、すぐに活用されたり売却されたりするケースは意外と少ないものです。
相続人が複数いて意思決定がまとまらなかったり、遠方に住んでいて管理に手が回らなかったりと、さまざまな理由で「とりあえず空き家のままにしておく」という状態が続きがちです。また、「いつか使うかもしれない」と曖昧なまま放置されたり、室内に残る荷物が片付かず、なかなか手をつけられなかったりするケースも少なくありません。
しかし犯罪者から見ると、こうした空き家は格好のターゲットです。
長期間人の出入りがなく、生活感が薄れている家ほど“使いやすい物件”として目を付けられやすいのです。雑草が伸び放題になっていたり、建物の傷みが進んでいたりすると、外観から「管理されていない状態」であることが一目でわかるため、悪用されるリスクはさらに高まっていきます。
所有者が負う法的・社会的リスクとは?
空き家が犯罪に使用された場合、通常は所有者に刑事責任が問われることはありません。
しかし、次のような問題が発生する可能性があります。
- 行政から「なぜ管理不全の状態にしたのか」と指摘される
- 近隣住民とのトラブルや苦情に発展する
- 物件のイメージ悪化により資産価値が低下する
- 売却時に「過去に不審利用があった家」として敬遠される
たとえ無関係であっても、「管理していなかった責任」は社会的には免れにくいのが現実です。
空き家を安全に保つために必要なこと
空き家の管理は、「鍵を掛けておく」だけでは不十分です。最低限必要な対策として、以下のようなものがあります。
- 定期巡回や室内外のチェック
- 郵便物やチラシの整理
この2つは、犯罪利用を防ぐうえでもっとも重要なポイントです。
加えて、庭木や雑草の手入れ、防犯カメラやセンサーライトの設置などの防犯対策、台風や大雨の後の建物の点検、不審な出入りがないかの確認など、細かな管理が求められます。特に相続した空き家は、日々の生活から切り離された場所にあるため後回しにされがちですが、放置期間が長くなるほどリスクは増えていきます。
空き家は“放置せず相談する”ことが最善策
空き家の扱いについて悩んでいる方は少なくありませんが、「とりあえず放置しておく」という選択だけは、リスクを高める原因になってしまいます。空き家問題に詳しい不動産会社に相談することで、状況に応じた現実的な選択肢が見えてきます。
例えば、将来的に住む予定がないのであれば売却という手段がありますし、活用したい場合には賃貸化して収益につなげる方法もあります。また、管理の負担が大きい場合には、専門会社による定期巡回サービスを利用することで、空き家を安全な状態に保つこともできます。
特殊詐欺に悪用されないように、入居審査を厳格に行う賃貸管理サービスを提供している会社もあり、空き家の活用と防犯対策を同時に進めることが可能です。こうした支援を受けることで、「何から始めればいいのかわからない」という状態から抜け出し、安心して次のステップに進むことができます。
空き家は、放置してしまうほど問題が複雑になり、対処が難しくなるものです。早めに専門家へ相談することが、空き家を安全に保ち、資産価値を守るための最善策と言えるでしょう。
相続した空き家でお悩みの方へ
特殊詐欺は日々手口を変えながら広がっており、その中で空き家が悪用されるケースは確実に増加しています。
“そのままにしておくだけ” が、犯罪のリスクを高めてしまう。
これは空き家を持つすべての方に知っていただきたい事実です。
相続や転居で空き家を所有している方、管理が追いつかず不安を抱えている方は、ぜひ一度当社へご相談ください。不動産の専門家として、最適な活用方法をご提案し、空き家を「悩み」ではなく「安心できる資産」に変えるお手伝いをいたします。