不動産の親族間売買で注意すべき点と押さえておきたい実務ポイント
- 売却
不動産の親族間売買は、距離が近い関係だからこそスムーズに進むようで、実務面ではむしろ慎重さが求められる場面が多くあります。特に価格設定や税務、将来の相続との兼ね合いは、普段以上に気を配っておきたいポイントです。
ここでは、親族間売買で押さえておきたい重要点を、実務目線で分かりやすく整理してご紹介します。
適正価格の設定は“親族間ならでは”のリスクに直結する
親族間売買でまず意識したいのが、売買価格。
「家族だから安くしてあげたい」という気持ちが行き過ぎると、税務署から“贈与”とみなされる可能性が出てきます。
価格設定をする際は、感覚的に決めるのではなく、客観的な材料を整えておくことが大切です。
- 近隣の売買事例
- 複数社からの査定
- 固定資産税評価額との比較
こうした情報を揃えておくと、「市価に基づく正当な売買」であることを説明しやすくなります。
住宅ローンは“普通の売買よりハードルが高い”
意外と見落とされがちなのが、金融機関の見方です。
親族間売買は「実態のない売買では?」と疑われやすく、第三者間での購入よりも審査が厳しくなります。
特に確認されやすいのは、
- 本当に代金の授受が行われるか
- 市場価格に基づいた取引か
- 契約書などの書類が整っているか
など。
親族間売買専用ローンを扱う金融機関もあるので、早めの情報収集が得策です。
書面の整備は“家族ほど必要”
親族間トラブルの多くは、言葉の行き違いから生じます。
だからこそ、売買契約書・重要事項説明書などは通常通りに作成しておく方が、結局は双方の安心につながります。
例えば、費用負担の範囲や引渡し日、支払い方法など、細かい部分ほど後々揉めやすい項目です。曖昧にせず、書面に落とし込んでおくのが鉄則です。
相続や共有名義にどう影響するかも考えておく
親族間売買は「相続対策の一環」として行われることもありますが、その後の名義や税負担が新たな火種になるケースもあります。
たとえば、
- 他の相続人の理解
- 不公平感の調整方法
- 売買後の固定資産税や修繕負担は誰が持つか
といった点は、事前に話しておくほどトラブルを防ぎやすくなります。
専門家の関与は“通常の売買以上”に価値がある
税務や登記の判断は、親族間売買になると複雑さが増します。
贈与税のリスク、譲渡税の計算、特例の適用可否などは、専門家に確認しながら進めるのが安心です。
誤った理解のまま手続きしてしまうと、後から思わぬ税負担が発生することもあるため、税理士・司法書士・不動産会社のサポートは非常に重要です。
親族間こそ“第三者の目”で冷静に
親族間売買は、信頼関係があるからこそ曖昧に進めてしまうことがあります。しかし、いざトラブルになると、お金以上に関係性へ影響が残りやすいのが難しいところです。
だからこそ、
- 市場に基づいた価格で
- 書類は丁寧に整え
- 税務・相続の影響も確認し
- 必要に応じて専門家を入れる
という基本を押さえることが、親族間売買を安全に進める最大のポイントになります。