入居者対応・入居者管理の重要性

  • 賃貸管理

時代とともに変化する「入居者トラブル」への備え

賃貸経営では、建物の老朽化だけでなく「入居者対応」も重要な管理項目です。
近年は入居者の属性・価値観が大きく変わり、従来とは異なるタイプのトラブルが発生するようになりました。
オーナー様にとっても、こうした変化を踏まえた入居者管理の視点が欠かせません。

コロナ以前:生活マナーをめぐるトラブルが中心だった時代る

コロナ以前の管理現場で多かったのは、生活マナーに起因する苦情です。ベランダ喫煙による臭いの流入、料理の匂い、柔軟剤の香りなど、日常的な匂いに関するトラブルが特に目立ちました。
この頃は、入居者同士のトラブル調整やマナー啓発が管理の中心。
「生活スタイルの違い」をどうすり合わせるかが大きな課題で、掲示物や周知文での啓発が比較的効果を発揮した時期でもあります。

コロナ禍:在宅時間の増加が生活騒音トラブルを一気に増加

コロナ禍で生活様式は大きく変わり、トラブルの傾向も一変しました。
テレワーク・オンライン授業の普及で 入居者の在宅時間が長くなり、生活音に関するクレームが急増。
足音、子どもの声、テレビ音、椅子を動かす音など、これまで問題化しづらかった音がストレスの原因となり、入居者同士の対立に発展するケースも増えました。
管理会社としては、単に注意するだけでなく、「相手の生活背景を理解してもらう」「思いやりの気持ちを促す」といった、心理的な調整が求められた時期といえます。

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コロナ以降:利便性の高まりが新たなトラブルを生む時代へ

社会が通常化した今、入居者の関心は利便性・効率性へと移っています。象徴的なのが、宅配ボックスをめぐるトラブルの急増です。
「荷物が取り出せない」「操作が難しい」「誰かが勝手に触った」など、小さな不具合でもクレーム化しやすく、問い合わせの件数も増加。宅配サービスの利用頻度が上がった分、使い方への理解不足や誤操作も増え、管理側にとって新たな負担となっています。
便利な設備であるほど、裏側に新しいリスクが潜んでいるのが現代の特徴です。

入居者意識の変化と、今後の管理で重要になるポイント

近年特に顕著なのは、「部屋を借りている」というよりも“サービスを受けている”という感覚の入居者が増えていることです。
家賃を払っているから自由に使えて当然、という意識や、コスパ・タイパ重視の価値観から、サービス業的な対応を求める傾向も強まっています。中には、インターネットで得た断片的な情報を根拠に過剰な要求を行う「カスハラ(カスタマーハラスメント)」に該当するケースもあります。
また、入居審査では支払い能力は確認できても、マナー・常識・価値観までは把握できません。
そのため今後は、

  • 入居前のルール説明
  • 入居後のフォロー体制

この2つが非常に重要です。
当社でも、物件ごとの特性に合わせた使用ルールやマナー資料を作成し、入居時に丁寧に説明する体制を整えています。
「事前に伝える」「事実に基づいて対応する」を徹底することで、トラブルを未然に防ぎやすくなります。

時代に合わせた“トラブルを防ぐ管理”が賃貸経営を支える

入居者対応は、サービス精神と同時に、時には毅然とした姿勢も必要です。
価値観が多様化し、トラブルの内容も変化している今こそ、ルールの明確化と正しい運用が安定した賃貸経営の鍵になります。
オーナー様が安心して賃貸経営を続けられるよう、「トラブルを未然に防ぐ管理」を常にアップデートし続けることが求められています。

この記事を書いた人

田井 捺記 宅地建物取引士・既存住宅アドバイザー・消防設備士乙種第4類

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