2025年の東京都賃貸市場を振り返って
- 賃貸管理
2025年の東京都の賃貸市場を総括すると、「家賃上昇が定着した一年」でした。
実際、複数の市場データを見ても、東京23区を中心に、単身向け・カップル向け・ファミリー向けの各間取りで募集家賃が前年を上回る水準で推移し、月によっては過去最高を更新する場面が続きました。
なかでも単身者向けの需要は強く、都心部では「この家賃で本当に決まるの?」と思うような水準でも成約に至るケースが増え、賃料の上げ幅に対する市場の許容度が一段階上がった印象があります。
では、なぜここまで上昇傾向が続いたのか。背景には、いくつかの要因が重なっていると考えられます。
上昇の背景にあった「需要の強さ」と「供給の出にくさ」
まず挙げられるのが、都心部への人口流入が続いたことです。通勤利便性や生活環境の良さを求め、23区、とりわけ都心寄りエリアへの居住ニーズが継続しました。加えて、外国人入居者の動きが回復し、需要の押し上げ要因になりました。
さらに、分譲住宅の価格高騰も見逃せません。「買うには高すぎる」「金利や将来の負担を考えると、まずは賃貸で様子を見たい」という風潮から、賃貸への志向が強まったことも、結果として需要を下支えしました。
もう一つ大きいのが、供給側の事情です。建築費や人件費の上昇が続き、新築の計画や供給ペースが以前ほど伸びにくくなりました。
つまり、2025年は「需要は増える」が「供給は増えにくい」という構造が進み、賃料上昇が起こりやすい条件がそろっていたと言えます。
市場は一枚岩ではない:二極化がより鮮明に
ただし、ここで注意したいのは、「東京だからどこでも一律に上がった」という単純な話ではない点です。むしろ2025年は、立地や築年数、設備水準などによって、物件の評価がはっきり分かれる“二極化”がより見えやすくなった一年でした。
駅からの距離がある、日々の暮らしをイメージしづらい動線になっている、競合と比べて設備の見劣りがある...などといった物件は、相場全体が上向いていても、その波に乗り切れないケースが出てきます。募集を出しても反響が薄い、内見までは入るが決め手に欠ける、結果として条件を見直す、といった動きが目立ちました。
言い換えると「上がる市場」になったからこそ、借り手は“高い家賃を払う理由”をよりシビアに見比べるようになったということです。
初期費用を抑える募集が広がり「条件設計」の重要性が増した
募集条件の作り方にも変化がありました。敷金ゼロ・礼金ゼロなど、初期費用を抑えた打ち出しは、2025年も広がりを見せました。家賃そのものが上がる局面では、入居時の負担を軽くする提案がより刺さりやすくなります。
一方で、初期費用を下げた分を家賃に反映させるのか、あるいは家賃を抑えて早期成約を取りにいくのか?というバランス設計がこれまで以上に重要になりました。
たとえば、同じ家賃上昇局面でも「家賃は強気、ただし初期費用は軽く」「家賃は相場寄り、ただし設備や運用で満足度を上げる」など、戦い方はいくつかあります。
大切なのは、なんとなく周辺相場に合わせるのではなく、物件の強み・弱みを踏まえて、入居者にとっての納得感をどう作るかという視点です。
2026年以降は「値上げ」よりも「選ばれる理由づくり」が鍵
ここまでの流れを踏まえると、2025年は単に「家賃を上げていく年」ではありませんでした。むしろ「物件の価値に見合う賃料とは何か」「その賃料で選ばれるために、どこを整えるべきか」が問われた一年だったと整理するほうが実態に近いでしょう。
家賃を上げやすい環境は確かにありましたが、上げ方を間違えると反響が落ち、空室期間が延び、結果的に収益が下がることもあり得ます。
逆に、立地の魅力が強い物件や、入居後の満足度につながる設備・管理が行き届いた物件は、相場上昇の追い風を受けやすく、適切な賃料調整が成果に直結しやすい一年でした。
では、2026年以降はどう考えるべきか。市場の大きな構造(都心志向の継続、供給の出にくさ、コスト上昇の影響など)が急に反転するとは考えにくく、基本的には「上がりやすい環境が続く可能性」があります。
ただし、上昇が続けば続くほど、入居者の目線はさらに厳しくなり、選別は進みます。だからこそ、これからは賃料水準そのものだけでなく、募集戦略の細部が差になります。
たとえば、写真や募集コメントで生活イメージが湧く情報を丁寧に出す、内見導線を整えて“決め手”を明確にする、設備投資の優先順位を誤らない、初期費用やフリーレントなどの条件を「短期的な値下げ」ではなく「成約率を上げる設計」として使うなど...。こうした積み重ねが、同じエリアでも結果に大きな違いを生みます。
まとめ:必要なのは「強気」でも「値下げ」でもなく“適正”
2025年の東京都の賃貸市場は、上昇局面の中で「選ばれる物件」と「工夫が必要な物件」の輪郭がはっきりし、賃料設定が“作業”から“戦略”へと変わった一年でした。
2026年以降も、市場の動きを丁寧に見極めながら、自社(あるいはオーナー様)の物件がどんな価値を提供できるのかを言語化し、それに見合った賃料と条件を組み立てていくことが、安定した運用につながっていくはずです。
必要なのは、無理に強気になることでも、安易に値下げに頼ることでもなく、「この物件が選ばれる理由」を整えたうえで、適正に価格を置くこと。2025年は、その重要性を市場全体が改めて示した一年だったと言えるでしょう。