一人だけじゃない。ローンの借り方 ~ ペアローン ~

  • 資金計画

近年は低金利が続いていますから、住宅購入を検討する際には、住宅ローンを利用する方がほとんどです。
一人では住宅ローンを利用するのが難しくても、共働きしている配偶者の収入を合算すれば利用が可能な場合もあります。今回は住宅ローンの借入方法、収入合算して借り入れる方法について解説します。

借り方の種類

住宅ローンを利用するには誰が借りるかによって次のように分類できます。

  1. 一人で借りる
  2. 二人以上で借りる(収入合算)
    • ペアローン
    • 連帯債務者
    • 連帯保証人

住宅ローンを利用するためには、金融機関が独自に行う融資審査に通らなければなりませんが、返済負担率など収入によって借り入れできる金額に制限があります。夫婦共働きをしていれば二人の収入を合算することでより多額の住宅ローンを利用することができます。
また、二人で借り入れることにより、住宅ローン控除を二人で使えること、住まいの給付金を二人ともが申請できることなどのメリットもあります。

借り方の種類

借り方の種類の特徴と違い

先にあげた種類によってそれぞれにどのような特徴があり、どのように違うのかを解説します。

一人で借りる

最も単純な借り入れ方法です。夫婦のうちどちらかの名前で借り入れをします。借り入れることができる金額は借り入れる方(債務者)の収入によります。
手続きが一人で可能な点がメリットですが、債務者となる方の収入によっては住宅購入資金がまかなえない可能性があります。

二人以上で借りる(収入合算)

二人以上の方が債務者となることで二人分の収入を基準にして借入ができますから、その分多額のローンを組むことができます。収入を合算できる相手方は、同居していることや親子や夫婦であることなど一定の条件がありますから、あらかじめ利用する金融機関に確認をしておきましょう。
また入籍前でも住宅ローンの借入申し込みは可能ですが、ローン契約までには入籍を済ませておかなければならない金融機関もあります。

ペアローン

夫婦二人がそれぞれ債務者になり、お互いに連帯保証人になります。
債務者になる方それぞれの収入によって融資の審査が行われます。
一人分の収入よりも二人分の収入によって住宅ローンが組めますから、その分多額の借入ができます。
ペアローンでは、例えば夫が債務者の借入金の連帯保証人に妻がなり、妻が債務者の借入金の連帯保証人に夫がなることになります。
二つの契約はそれぞれ別個の契約ですから、一つは固定金利を選択しもう一方は変動金利を選択することや、元利均等返済方式と元金均等返済方式とを組み合わせることも可能です。
出産・育児の予定を組んでそれまでに妻の返済をすませるようにライフプランを設計し、夫は返済期間を35年にして妻は返済期間を10年にすることなども考えられます。

ペアローン

ペアローンの場合、ローン契約は二つになりますから、ローン契約にかかる手続きや費用が二つ分必要になります。 そのため、契約書に貼付する収入印紙も2倍、抵当権設定登記費用も2倍かかることがデメリットといえます。
また、万が一に備えて団体信用生命保険に加入する方が多いですが、債務者ごとに加入しますから、例えば夫に事故があった場合におりる保険金は夫の借入分に限られます。そのため夫が債務者になっている借入金は保険金によって返済されますが、妻の借入金は残りますから注意しましょう。なお、住宅ローン控除の適用をうけるのは、それぞれの借入金の範囲となりますから、なるべく多く控除できる金額で分担して住宅ローンを組むのが賢明です。
ペアローンでは債務者が個別です。そのため、例えば妻が出産・育児のため収入がなくなった場合には返済ができなくなります。夫の収入で妻が債務者になっている借入金を返済すればよいと考えてしまいますが、夫婦であっても税法的には他人ですから、厳密にいえば贈与税がかかってしまうおそれがありますので注意しましょう。

連帯債務者

親子または夫婦二人以上が債務者となり一つのローン契約を結ぶ方法です。
複数の債務者のうち、一人が主たる債務者となり他の方は主たる債務者に連帯する債務者(従たる債務者)となります。融資可能額は連帯債務者全員の収入を合計した金額をもとに審査されます。連帯債務の場合、連帯債務者全員が返済義務を負います。
住宅ローン控除は二人がそれぞれ受けることができますが、それぞれの年収割合と所有権の共有割合によって控除できる額が異なります。
なお、団体信用生命保険には主たる債務者のみが加入でき、従たる債務者は加入できない場合が多いですからどちらが主たる債務者になるかは、十分に検討するにこしたことはありません。また、連帯債務による住宅ローンを扱っていない金融機関もありますから、事前に確認をしましょう。
住宅ローンの控除額はもとより連帯債務で借り入れをし、共有名義にするときには贈与の問題が発生しやすくなりますから、共有名義の持分割合を決めるときには慎重に検討をしてください。

国税庁:共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算

連帯保証人

債務者は原則として一人で、収入合算する方が連帯保証人になります。
住宅ローン控除は債務者が全額受けることができます。そのため連帯保証人は控除をうけることはできません。せっかく自宅を購入するから夫婦二人名義にしたいと思ってしまいますが、債務者が一人で売買代金全額を住宅ローンでまかなう場合には不動産の所有者は一人にし、二人名義にすることは避けましょう。贈与税が課税されてしまうためです。
ただし、婚姻期間20年越しの夫婦間においては住宅取得資金の贈与も贈与税がかからずにすることができますから、この場合単独債務者であっても共有名義にすることは可能です。 団体信用生命保険に加入しておけば連帯保証人になっても、万が一の時には保険金によって残りの債務が完済されますから、債務を負担するおそれはありません。

収入合算するときの注意点

一人で住宅ローンを組むよりも二人で共同して住宅ローンを組むことでより高額な不動産を購入できるのはうれしいことですが、今までに解説したそれぞれのメリット・デメリットを比較してより良い選択をしてください。
特に注意しておきたいことは以下の点です。

  • ペアローンでは別個の契約になり、手数料なども2倍必要
  • 出資(借入を含む)に見合う持分割合にしないと贈与税がかかる
  • 住宅ローン控除や住まいの給付金をできるだけ多く利用できる借入額に分担する
  • 団体信用生命保険に加入できるかを考慮する
収入合算するときの注意点