不動産を売る時の「物件調査」とは?
- 売却
不動産会社に不動産の売却を依頼すると「物件調査」が行われます。 この記事では物件調査の目的、物件調査で行うこと、物件調査の中でも特に現地調査について解説します。
物件調査の目的
不動産を売却するためには、売却価格を決めなければなりません。 そのために不動産の状況を把握するのが物件調査の目的です。 物件調査をすることで、不動産売却のプロの目により売却する不動産の適正な価格が査定されます。
物件調査で行うこと
不動産の売却依頼を受けると、不動産会社は、まず最初に売主の本人確認を行います。 不動産の売買は大きな金額の取引になるため、本人以外が売主になりすます「地面師詐欺」などを防ぐためです。物件調査の内容は多肢にわたりますが、要約すると主な調査事項は次の5つです。
- 現地での調査
- 法務局での調査
- 役所での調査
- インフラ設備の調査
- 市場・取引事例の調査
不動産会社は、これらの調査によって得られた情報を総合的に判断して売却価格を査定し、売主に価格を提示します。
現地調査
売却予定物件の現地調査では、物件内部調査などを行い売却価格の査定をするための情報収集をします。
現地調査で調査すること
現地調査では実際に売却不動産に出向き、次のような項目について調査します。
- 地形( 土地の高低、傾き、地質など)
- 道路(現地に至る道路の状況や接道状況など)
- 境界(境界標の有無、越境など)
- 公図との整合性
- 建物の状況
- インフラ設備の確認
- 近隣の土地の利用状況(利便施設や嫌悪施設の有無)
- 公共交通機関の利便性
- 騒音や異臭などの状況
- 事故や災害の有無
- マンションと一戸建て・土地の調査ポイントの違い
物件調査の内容は、売却する不動産の種類により重視されるポイントが異なります。
一戸建ての場合は土地が重要な要素になるため、境界の有無や越境がないかが大事なポイントです。
一方、マンションは管理状況によって評価が大きく変わります。
そのため、マンションの規約や管理状態が重要な要素になります。
以上のことから、それぞれの重要な調査ポイントは以下のようになります。
マンションの場合
- 共有スペースの状態(ポストや廊下、エレベーターなど)
- 管理規約の内容(ペット飼育の可否、楽器演奏の制限、ゴミの出し方など)
一戸建てや土地
- 接道状況
- 土地の埋設物
- 建付けや雨漏りの有無
- 日当たりの状況など
現地調査の詳しい内容
ここでは現地調査の内容について詳しく解説します。
1.地形( 土地の高低・傾き・地質など)
土地の高低差や傾きなど、現地に行かなければわからないことを調査します。 登記上の地目(用途)と実際の地目が合っているかも確認します。 登記上の地目が畑になっている場合、現地に建物が建っているとしても農業委員会への届出や許可が必要になり、また、買主が利用する金融機関から地目を現況に合わせるように指示されることがあります。 また、近年自然災害が多発していることから購入希望者の関心も高いため、ハザードマップで災害指定地域になっていないかの確認も行います。
2.道路(現地に至る道路の状況や接道状況など)
道路は、建て替える際に幅員4メートル以上の道路に接していなければ建築が制限されるため、幅員が確保されているかを確認します。 その他に道路の舗装状況、敷地との高低差、街路樹・街灯などの整備状況も合わせて調査されます。
3.境界(境界標の有無、越境など)
境界標は金属やコンクリートなどいろいろな素材のものが利用されていますが、現地に境界標がきちんと設置されており、境界が確定しているか、越境されている、あるいは、越境している部分がないかを調査します。
例えば塀が境界になっているとき、塀の左右、あるいは真ん中のいずれが境界か隣地同士で確認がとれないことがあります。 不動産を売却する際には必ず境界確定をしておく必要がありますので、売却を依頼する前に確認しておきましょう。 また、最近は不動産取引に際して確定測量(全ての隣接地との境界確認をする測量)を行うことが多くなっていますので、現地調査のときに今後の流れを不動産会社に確認しておくと安心です。
さらに、庭に植えてある樹木や屋根のひさしなどが隣地に越境をしていないか、されていないかもあわせて確認をしておきます。 すぐに撤去するのが難しい時は、隣地と覚書を結んでおくなど後日のために証書を残しておかなければなりません。 こちらの場合も不動産会社の担当者と打ち合わせをしながら進めましょう。
4.公図との整合性
市街地や区画整理をされていない地域では、法務局の公図が整備されていないために現在の状況と合っていないことがあります。 場合によっては、法務局に対して地図訂正の申立などを行う必要があるため、そのような懸念がある場合は不動産会社に相談しましょう。
5.建物の状況
建物の状態や管理状況などについて確認・調査を行います。 外壁や屋根、床、建具の動作などを調査し、雨漏りの有無などを確認します。
後日「付帯設備表・物件状況確認書」といった書類を売主から不動産会社に提出することになります。 この書類は売主の「契約不適合責任」にも関わってくる重要な書類のため、不動産会社と打ち合わせをしながら正確に記入できるようにしましょう。
付帯設備表・物件状況確認書について6.インフラ設備の確認
水道やガスなど、普段の生活に必要なインフラ設備の確認を行います。 先にあげた「役所での調査」でも上下水道やガス・電気の供給については調査しますが、現地調査でも確認します。
- 飲料水設備(上水道あるいは井戸など)の有無
- 下水設備、浄化槽
- 電気の容量
- 都市ガス、プロパンガスの別など
- 設備設置・更新にかかる費用
7.近隣の土地の利用状況(利便施設や嫌悪施設の有無)
大型スーパーや学校などの利便施設が近くにあるか、墓地やゴミ焼却場などの嫌悪施設と言われるものが付近にあるかなどを調査します。
8.公共交通機関の利便性
公共交通機関は普段の通学や通勤に深く関わっていて、生活の利便性に影響することから、購入希望者も気にすることの多いポイントです。 近隣の公共交通機関の利便性や、駅までの距離などを調査します。
9.騒音や異臭などの状況
騒音や異臭などは実際に現地に行かなければわからないものです。 料理店や工業地域など、場所によっては異臭や騒音が気になることもあるため、このようなことも現地調査で確認します。
⒑事故や災害の有無
自殺や傷害事件、火災などいわゆる事故物件ではないかを確認します。 事故物件であれば「重要事項」として売主は説明責任を負いますので、正確に説明するように心がけましょう。
まとめ
売却価格を決めるためには、物件調査は重要なポイントとなります。 また、あらかじめ隅々まで調査をしておくことで、契約前後の不足のトラブルを回避し、スムーズな取引を実現することができます。
物件価格は上記で解説したさまざまな調査事項の結果をもとに、経済情勢や市場の動向、エリアの特性などから総合的に算出されます。適正価格の査定のためにも、不動産会社と協力して物件調査をしっかりと行いましょう。