売買契約当日の手続きの流れや内容について解説
- 売却
不動産の売却手続きが進んで売却する条件が整えば、いよいよ買主と売買契約を結ぶことになります。
この記事では、売買契約の当日はどのようなことをするのか、契約当日の手続きの流れや手続きの内容について解説します。
売買契約の当日にすること
売買契約を締結するときには、売主・買主と宅地建物取引士らが集まって、以下のことを行うのが原則です。
- 重要事項説明
- 付帯設備表、物件状況等報告書の説明
- 売買契約書に記名押印
- 手付金の授受
- 仲介手数料半金の支払い
重要事項説明
不動産の売買契約をする前に、売買対象の不動産に関する重要な事項について、宅地建物取引士から買主に対して説明することが法律で定められています。
重要事項
- 取引する不動産に関すること
- 売買契約に定める取引条件に関すること
- その他
に分類されますが、おもな内容は以下のようになります。
取引する不動産に関すること
取引する不動産について、登記事項の記載内容や法令による制限、接道やインフラ設備などについて説明します。
売買契約に定める取引条件に関すること
売買代金、手付金、住宅ローンの斡旋などについて説明します。
付帯設備表・物件状況確認書
不動産に付属する動産(取り外しのできない設備など)の状況を説明する書類の確認が行われます。このときに物件に残されるものや、その状況について説明がされます。
こちらのコラムで説明しています
付帯設備表・物件状況確認書について
売買契約書に記名捺印
買主が重要事項の説明を受けて了解し、売買契約書に記載してある条件に売主・買主の双方が納得すれば売買契約書に記名捺印をします。
売買契約書の内容を確認しましょう
売買契約書に記載されている内容をよく吟味し、納得したうえで記名押印するようにしましょう。
記載内容について疑問があればなんでも聞いて、確実に理解することが大切です。
契約書に記名捺印をすると、簡単には契約の解除はできません。不安な部分はかならず事前に確認しておきましょう。
売買契約書の基本的な内容
売買契約書には、売買にかかわる重要な条件が記載されています。基本的な内容は以下のとおりです。
- 契約の当事者
- 売買目的の不動産の表示
- 売買代金の決定方法
- 境界の明示に関する事項
- 売買代金の支払い方法
- 手付金に関する事項
- 契約解除に関する事項
- 所有権の移転登記・引き渡しの時期に関する事項
- 不動産に付属する設備や備品などに関する事項
- 抵当権などの抹消についての定め
- 公租公課などの精算に関する事項
- 危険負担についての定め
- 反社会的勢力の排除条項
- ローン特約についての定め
- 契約不適合責任に関する事項
1.契約の当事者
売買契約において、契約当事者が誰なのかはとても大切な事項です。 個人の場合は住所と氏名で特定し、契約の際は本人確認書類が必要になります。
2.売買目的の不動産の表示
売買の目的となる不動産を表示して特定します。 原則として登記記録の通りに記載します。
3.売買代金の決定方法
建物の場合は不動産会社が売買金額の査定を行いますが、土地の売買代金を決めるときは、下記の2通りの方法があります。
- 登記記録上の面積に㎡単価をかけて算出
- 実測面積に㎡単価をかけて算出
どちらの方法で計算したかがわかるように売買契約書に記載します。
4.境界の明示に関する事項
売主は買主立ち合いのもとで、売買対象の土地の境界を明示する必要があります。
隣地との境界がはっきりしない場合には、売主の責任で境界を確定しなければなりません。
隣地から境界を超えて樹木の枝が延びている場合や、屋根のひさしなどの工作物が境界を超えているような場合は、原則として売主の責任で引渡しまでに解消しなければなりません。
このような境界に関する取り決めについて売買契約書に明記しておきます。
※場合によっては、買主がこの売主の責任を免除することもあります。
5.売買代金の支払い方法
通常は、売買代金の支払いは所有権移転・引渡しと同時にされます。
買主は売主に対して売買代金をいつまでに支払うのか、また中間金(代金の一部を引渡し前に払うこと)を支払う場合にはその支払時期や金額について、売買契約書に記載し明らかにしておきます。
6.手付金に関する事項
売買契約が成立すれば、買主は売主に対して手付金を支払うのが通例です。
手付金の額は、通常は売買代金の5%〜20%の範囲内で決められています。
手付金には下記の3つの意味があるとされています。
- 証約手付(契約の証拠金)
- 解約手付(解約する時の代替金)
- 違約手付(債務不履行の場合の賠償金)
7.契約解除に関する事項
売買契約を解除できる条件についての定めを明記しておきます。
手付解除の場合の定めや、契約の相手方が約束を守らない債務不履行の場合の定め、ローン特約がある場合の解除などについて条件を記載します。
8.所有権の移転登記・引渡しの時期に関する事項
原則として、所有権移転登記や対象不動産の引渡しは売買代金の支払いと引き換えに行われます。
9.不動産に付属する設備や備品などに関する事項
売主が作成した「付帯設備表」を引用して、売主の責任の範囲を明確にします。
10.抵当権などの抹消についての定め
不動産に抵当権(住宅ローンなどの担保)が設定されたままになっていたり、賃借権や地上権など他人が使用できる権利がついていたりすると、買主は完全な所有権を取得することができません。 このようなときには、いつまでに抵当権などを抹消するかを売買契約書に明記します。
11.公租公課などの精算に関する事項
固定資産税や都市計画税などの公租公課や、ガス代や水道料金、賃料収入などの精算方法を決めておきます。
固定資産税や都市計画税は、年度途中で課税名義人の切り替えができないので、代金決済日の前日までは売主が負担し、決済日以降は買主負担とするのが通例です。
ただし、起算日については1月1日とする地域と4月1日とする地域があり、その地域の慣例に従うことが多いです。契約の際に確認しましょう。
12.危険負担についての定め
危険負担とは、地震や火事などで被害を受けた場合に発生した損害を、売主と買主のどちらが負担するかを定めておくものです。
13.反社会的勢力の排除条項
反社会的勢力ではないことを売主買主双方で宣誓することになります。
14.ローン特約についての定め
買主が住宅ローンの利用を前提として売買契約をしたものの、金融機関から融資承認がおりなかったときには、買主は売買代金を支払えません。このようなときに備え、売買契約が白紙解約されて支払った手付金もそのまま返してもらえる特約をつけることがあります。このような特約を「ローン特約」といいます。
通常は、売買契約の白紙解約により手付金はそのまま返金されて、仲介する不動産会社に支払った仲介手数料の半金も返金されます。売買契約書にこのような特約があるのか確認しておきましょう。
15.契約不適合責任に関する事項
売買目的の不動産に、契約に適合しない不具合があった場合には、買主は売主に補修や売買代金の減額、損害賠償、売買契約の解除を請求できます。
売主が責任を負う期間は民法では1年とされていますが、この規定は任意規定のため変更が可能です。
「売主は責任を負わない」旨を定めたり、責任を負う期間を「2月〜3月間」と定めたりしていることが多くあります。こちらの条件についても確認しておきましょう。