決済、引渡しに向けた準備

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売買契約が成立したら、あとは売買代金の決済と引渡しを残すだけです。
売買契約から代金決済まで通常は1ヶ月〜長ければ3ヶ月ほど、場合に応じて猶予期間をもうけます。この期間内に、買主と売主はそれぞれ代金決済に向けて準備をしていきます。
この記事では、売主が決済、引渡しに向けて必要な準備について解説します。

公的なまたは第三者の協力が必要な手続き

引渡しに向けた準備には、引っ越し手続きなど自分だけでできる準備とそうではないものがあります。
公的な手続きや第三者の協力が必要な手続きは、早めにとりかからないとすぐに時間が経ってしまいます。 以下の手続きは早めに準備を始めましょう。

  1. 登記に関する手続き
  2. 許認可が必要な手続き
  3. 第三者の協力が必要な手続き
決済、引渡しに向けた準備

1.登記に関する手続き

登記に関する手続きには、決済当日にできるものと準備期間が必要なものがあります。
売却する不動産の登記記録を確認して、必要な手続きはないか担当する不動産会社に相談しておきましょう。

決済と同時にできる登記

登記記録に記載されている住所や氏名が引越や婚姻・離婚によって変更になっている場合は、所有権移転登記の前提として現在の住所・氏名に合致させる登記が必要です。 住民票や戸籍謄本と、登記記録と現在までが連続している証明書が必要になります。
決済当日にそろっていなければ決済ができなくなる恐れがあるため、あらかじめ揃っているか不動産会社か担当の司法書士に確認してもらいましょう。

準備期間が必要な登記

土地の地目(用途)変更や建物の種類(用途)が変わっている場合、建物を増改築している場合などに、土地の分筆・合筆(分けたりまとめたりすること)が必要な場合があります。所有者が亡くなっていて相続が発生している場合は、相続登記が必要です。
これらの登記は、現地の調査や相続人が確定できる戸籍謄本などの資料の取り寄せが必要なため、すぐにはできません。 十分な余裕を持って準備をはじめましょう。

2.許認可が必要な手続き

不動産を売却するために役所・役場に届出をしたり、許認可を得たりする必要がある場合があります。
許認可を得るためには相当な日数が必要になることが多いため、早めに準備を始めましょう。

農地転用

登記地目が田・畑になっている場合、または固定資産税の課税地目が農地になっているときには、農業委員会の許可あるいは届出が必要です。必要な許可を得ていなければ、売買契約は効力を生じません。
登記地目が農地になっている場合には、農業委員会からの許可書または届出書を、所有権移転登記の申請書に添付する必要があります。

成年被後見人が所有している場合の裁判所の売却許可

成年被後見人の自宅を売却する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
後見人は成年被後見人について大きな代理権をもっていますが、成年被後見人の自宅を勝手に売却することはできませんので注意しましょう。売却許可がおりるまで、通常は約1ヶ月かかります。

3.第三者の協力が必要な手続き

売却するために第三者の協力が必要な場合とは、以下のような事例です。
必要な承諾などがないか、不動産会社と相談しながら準備を進めましょう。

借地上の建物を売却する場合の地主の許可

借地上の建物を売買することは、土地の借地権を譲渡することになるため、あらかじめ地主の承諾を得ておく必要があります。対象になるかどうか、事前に確認して把握しておきましょう。

境界の明示・境界確定

土地を売買するときには、売主は隣接する土地との境界を明示しなければなりません。境界が不明確な場合には、境界の確定が必要です。
隣接する土地の所有者が近くに住んでいればよいですが、遠い場所に住んでいる場合や所有者が亡くなり相続人が多数いるような場合には、立会の日程調整が難しいなどの理由から、境界の確認がなかなかうまく進まないことがあります。
境界の場所でもめているときには、なおさら時間がかかってしまい、決済までにうまくまとまらないことも考えられます。

境界の明示・境界確定

金融機関からの抵当権抹消書類の準備

売却する不動産に抵当権が残ったままになっているケースがあります。 これは、ローンを返済したものの、必要な手続きをしていないために起こることがあります。
住宅ローンを返済中であれば、遅くとも決済日には抵当権を抹消できるように手配をしておかなければなりません。
以下の記事に詳しく解説していますので、参考にしてください。

どうして繰上返済が必要なの?ローンの繰上返済をする理由・申込方法を解説

決済当日に持参するものを整理

決済当日に持参するものは、早めに準備して整理しておくと安心です。

  • 買主への所有権移転登記に必要なもの
  • 買主へ引き継がなければならないもの・引き継いでおきたいもの
  • 金銭的な準備

買主への所有権移転登記に必要なもの

  • 本人確認書類
  • 権利書(登記済証・登記識別情報通知書)
  • 印鑑証明書(有効期間3ヶ月)
  • 住民票・戸籍謄本など(必要な場合)
  • 実印

本人確認書類を持参する理由は、「なりすまし」などの犯罪防止のためのほかに、もう一つ重要な役割があります。
それは、本人確認書類があれば、万が一権利書だと思いこんで持参した書類が権利書ではなかった場合に、決済に立ち会った司法書士の責任で、権利書の代わりになる手続きをとることができるからです。

もしも権利書がなく、本人確認もできなければ、その日に決済ができなくなります。最悪の場合、違約金などの損害賠償が発生するおそれがあります。

司法書士が本人確認をするためには、次のいずれかが必要です。

  • 顔写真がある公的な証明書(住所・氏名・生年月日が記載)が1通
  • 顔写真がない公的な証明書の場合2通
買主へ引き継がなければならないもの・引き継いでおきたいもの

買主へ引き継がなければならないもの・引き継いでおきたいもの

  • 家などの鍵類
  • 建築確認通知書・検査済証
  • 実測図・建築図面
  • 建築協定書など
  • 付帯設備や残置する家電などの取扱説明書
  • マンションではパンフレット・管理規約・使用細則・管理組合の総会議事録など
  • 借地権譲渡承諾書などの権利関係を証明するもの

金銭的な準備

  • 仲介手数料の残金
  • 登記費用+司法書士報酬
  • 通帳・銀行印

※通帳や銀行印は必ずしも必要ではありません。
通帳があれば、振込の方法で売買代金の支払いを受けるときに振込先の口座番号などを確認できるので間違いなく安心できますし、振込完了後に入金確認をするときも容易にできるためです。

決済・引き渡しを行うときは、さまざまな準備と書類が必要になります。
不動産会社や必要な場合は司法書士が全面的にサポートしてくれますので、漏れのないように、確実に準備を進められるよう、早めの手配を心がけましょう。

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