断熱性能と気密性 カビ発生の根源をたどる

  • 賃貸管理

知らない間に住まいのあちこちに生えてしまっているカビ。 カビ対策にお悩みの方も多いのではないでしょうか?
カビは胞子と呼ばれる、目に見えない形で空中に浮遊しています。どこにでもいます!
その胞子が、玄関や窓、身の回りに付着して室内に侵入し、胞子が成長するとカビとして目に見えるようになります。
今回は、どうすればカビが発生するのか、また住宅性能とカビの関係をお伝えしたいと思います。

カビの発生メカニズム

カビの発生原因と要因

カビは主に、下記の3つの条件が揃った場合に発生すると言われています。

カビの発生:3条件

  1. 湿度条件(60%〜80%付近)
    →湿度が60%を超えると爆発的にカビが増殖すると言われています。
  2. 温度条件(室温が25度〜30度)
  3. 環境条件(カビ増殖のための栄養分が豊富)
    →ホコリや皮脂などの汚れがカビが好む環境
カビの発生原因と要因

湿度は言葉の通り、空気の湿り度合いを表しますが、正確に言うと空気中に含まれる水分量・割合を表しています。湿度が低ければ低いほど空気は乾燥します。一般的に梅雨や例年6月〜9月頃の時期は雨天の日が多く、湿度が高くなるため、カビが発生しやすい時期と言われていますが、それだけが原因ではなく、温度条件や環境条件などが合わさったときにカビが発生します。つまり湿度が高くても、一定の気温が確保され、またカビが好むような環境条件がない場合は、カビが発生する可能性は低く、一概に「湿度が高い=カビが発生しやすい」とは言えません。

湿度をコントロールする

とはいえ、カビの発生を防ぐためには、湿度をコントロールして、カビの発生する環境を作り出さないことが重要です。湿度が高くなる要因としては、以下があります。

  • 人間の呼吸など
  • 浴室・水回りの水蒸気・湿気
  • 洗濯物の室内干し
  • 収納内(ものが多く空気が滞留しやすい場所)

エアコンの除湿機能やドライ機能などを活用して、除湿を行い、カビが発生しにくい湿度条件に保つことが大切です。

湿度をコントロールする

住宅性能とカビの関係

高気密・高断熱性

現在は気密性・断熱性に優れた住宅や共同住宅が多く、例年の厳しい暑さや寒さからも快適に過ごせる居住環境が確保されています。しかしながら、優れた気密性・断熱性とカビの発生についてはまた別として考える必要のある問題です。改めて気密性と断熱性について説明します。

気密性(高気密性)

建物の隙間をなくして、空気の出入りを少なくする(外気の影響を受けなくする)

断熱性(高断熱性)

外気温の影響を受けないように遮る性能

高気密・高断熱性

鉄筋コンクリートのマンションなどは気密性が高く、空気の出入りが最小限なため、室内の温度を一定の温度に保つことができます。また高断熱な住宅は外気の影響を受けにくくなるため、冬は温暖、夏は冷涼な環境を保つことができます。

高気密・高断熱住宅でカビは発生しないか?

カビは外気と室内の気温の温度差によって結露が発生し、空間内の湿度が高くなり発生します。高気密・高断熱の住宅では、温度差を抑えることができるため、室内側のカビの発生を抑えることはできますが、壁内(より外気に近い部分)では温度差によって結露が発生し、カビが発生します。
鉄筋コンクリートのマンションなどでは、コンクリートに石膏ボードを張ってクロスを張る施工も多く、コンクリートを隔てて外気と室内の温度差が大きくなり、クロスなどにカビが発生するケースも多くあります。つまり、気密性が高くても断熱性が低ければ温度差によってカビが発生する可能性があります。

カビの発生を抑制する

「気密性」「断熱性」「換気」をセットで考える

カビの発生を抑制するためには「気密性」「断熱性」「換気」をセットで考えることが重要です。外気の影響を最小限にして、温度を一定に保つことと室内の換気・除湿によって湿度を一定に保つことが必要です。24時間換気システム等の導入により、計画的に室内の空気を排気し、外気を取り込むことで、一定の温度や湿度が保たれるようになっています。またエアコン等の除湿機能やドライ機能などを活用して、湿度をコントロールする必要があります。
特に、鉄筋コンクリート造の地階のある物件や半地下にある部屋などは、外気の影響を直接的に受けるため、温度差が起き結露が発生しやすくなります。加えて、室内の空気が滞留することによって、湿度が高くなりカビが発生しやすくなります。こういった場所では、適切に換気・除湿を行い、温度・湿度を一定に保ちつつ、断熱性を高めて外気の影響を少なくする対策が必要になります。

対策実例・施工実例

カビの根本改善のためには、やはりカビの発生している場所(壁内や壁紙等)を一部壊して、カビが発生する原因を調査した上で施工する必要がありますが、既存住宅の場合は非現実的です。とりわけ、原因が建物の構造上の部分にある場合は施工はできません。
下記の事例では、カビの発生の要因となる部分を低減させる施工を実施しました。

事例:和室の壁面・壁紙にカビが発生

  • 要因
    コンクリートの壁に外気と室内との温度差によって結露が発生し、カビが発生。
  • 施工方法
    断熱材を施工する方法が難しいため、防カビ・除カビ作業後、結露を低減させるシート剤を貼付した後にクロス張りを実施。
  • 効果
    温度差による結露を低減させ、カビの発生を抑制。大規模な断熱材による施工ができない場合に有効。

まとめ

カビは一度発生してしまったら、根絶するのは非常に困難です。こまめな換気とお掃除でしっかりと予防しましょう。 カビはどんな空間でも発生する可能性があります。そして、一度発生してしまうとなかなか取り除くことが難しいので、発生しないように、換気・掃除をこまめに行い、防カビ加工製品を上手に使用しながら予防することが大切です。

この記事を書いた人

田井 捺記 宅地建物取引士・既存住宅アドバイザー・消防設備士乙種第4類

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