漏水発生時の対応と費用感 ― 管理会社が行う流れ

  • 賃貸管理

賃貸物件において、最も注意すべきトラブルの一つが「漏水」です。
特に集合住宅では、階下や隣室にまで被害が及ぶ可能性があり、放置すれば内装の損傷や補償対応など、オーナー様にとって大きな経済的・精神的負担となりかねません。ここでは、漏水が発生した際に管理会社や専門業者がどのような対応を行うのか、その流れと費用感についてご紹介します。

1.初動対応 ― 被害拡大の防止(数千円~数万円程度)

漏水が確認された際、最も重要なのは「スピード」です。水の広がりを最小限に抑えるため、応急処置として養生を行ったり、排水ホースを用いて水を逃がすなどの作業を行います。また、水道の元栓を閉めて止水することもあります。
この初動対応の速さが、その後の被害規模を大きく左右します。逆に初期対応が遅れると、階下の天井や壁、床まで水が染み込み、修復費用が何倍にも膨らんでしまうケースもあります。

2.原因調査 ― 給水管か排水管かを特定(3~10万円程度)

応急処置の後は、漏水の原因を突き止める調査に入ります。代表的な調査方法には以下があります。

  • 耐圧試験: 水道メーターにテストポンプを接続し、給水管に圧力をかけて確認します。圧力が下がれば、給水管から漏水していると判断できます。
  • 蛍光試験: 給水管に異常がない場合は排水管を疑い、蛍光塗料入りの水を流して漏水箇所を目視で確認します。

原因調査は一見地味ですが、ここで誤った判断をすると修理の方向性がずれてしまい、再度工事が必要になることもあります。そのため、専門知識と経験を持つ業者による正確な調査が不可欠です。

3.修理・改修工事 ― 状況に応じた対応

調査の結果に応じて、以下のような修理が行われます。

  • 給水・給湯管の漏水
    多くは給湯管の曲がり部分にできるピンホール(小さな穴)が原因です。部分的な補修も可能ですが、再発リスクが高いため、配管を新しく引き直すケースが一般的です。
  • 排水管の漏水
    横引き管と縦引き管の接続部分での漏れが多く、部分補修や接続部の改修で対応可能です。

費用は部分的な改修なら 5~15万円程度、部屋単位で全面的に改修する場合は 30万~100万円規模 になることもあります。修理規模によって金額が大きく変動するため、見積もりの確認が重要です。

4.復旧工事 ― 被害宅への対応(10~50万程度・広範囲の場合は100万円規模)

漏水によって階下や隣室の内装が傷んだ場合は、クロスや床材の張り替えといった復旧工事が必要です。範囲が広い場合には 100万円規模 に達するケースもあり、オーナー様の負担となることが多いため、費用面の把握と工事内容の確認が大切です。
また、保険適用の可否によっても負担額が大きく変わるため、火災保険・施設賠償責任保険などの補償内容を事前に確認しておくことも、オーナー様のリスク管理として非常に有効です。

オーナー様に知っておいていただきたいこと

漏水は、通常の設備トラブルと比べても入居者様の生活に与える影響が大きく、放置できない問題です。発生時には状況確認と同時に調査・修理を並行して進める必要があり、迅速な判断が求められます。
特に、原因が雨漏りや建物構造に起因する場合は、調査や工事が長期化し、費用も膨らむケースがあります。そのため、オーナー様としては以下のポイントを意識しておくことが大切です。

  • どのような調査が行われるのかを把握する
  • 修理の方法と範囲を確認する
  • 見積もりをしっかり精査する
  • 保険の適用範囲を確認しておく

これらを管理会社・業者と密に連携しながら進めることで、リスクを最小限に抑え、入居者様に安心して暮らしていただける物件づくりにつながります。

この記事を書いた人

田井 捺記 宅地建物取引士・既存住宅アドバイザー・消防設備士乙種第4類

人気物件ランキング