住宅購入後こそ考えたい、防犯という「暮らしの安心設計」

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高齢者世帯と離れて暮らす家族のために

戸建て住宅を購入したとき、多くの人は間取りや日当たり、設備の新しさに目が向きます。一方で、「防犯」については後回しになりがちです。しかし近年、住宅を取り巻く社会環境の変化により、住み始めてからこそ防犯対策を考える重要性が高まっています。
本コラムでは、高齢者世帯や、親と離れて暮らす子世代に向けて、住宅購入後・居住中に考えるべき防犯対策を解説します。

高齢者を取り巻く防犯リスクの変化

近年、高齢者世帯を狙った侵入事件や強盗事件の報道が増えています。その背景には、単に治安の問題だけでなく、社会構造の変化があります。
かつては三世代同居や近居が一般的で、家族や近隣の目が自然と防犯の役割を果たしていました。しかし現在は核家族化が進み、高齢の親が一人、あるいは夫婦だけで暮らすケースが珍しくありません。子ども世代が離れて暮らすことで、日常的に様子を確認することが難しくなっています。
こうした環境では、「狙われにくい家であるかどうか」が、以前にも増して重要になっています。

高齢者を取り巻く防犯リスクの変化

防犯の基本は「三つの視点」

防犯対策というと、特別な設備や高額なシステムを想像するかもしれません。しかし基本となる考え方は非常にシンプルです。

  1. 侵入させない
  2. 侵入に時間をかけさせる
  3. 途中で諦めさせる

この三つを意識するだけで、防犯対策の方向性は明確になります。侵入者は「目立つ」「時間がかかる」「リスクが高い」家を嫌います。完璧な防御を目指す必要はなく、狙われにくい状態を作ることが現実的な目標です。

特に注意すべき侵入口は「窓」と「玄関」

戸建て住宅において、侵入口として特に多いのが窓と玄関です。
集合住宅と異なり、戸建ては敷地内に直接アクセスできるため、死角が生まれやすいという特徴があります。庭に面した窓や、人目につきにくい勝手口などは、侵入経路として狙われやすいポイントです。
また、玄関についても「鍵を閉めているから安心」とは言い切れません。ピッキングやこじ開けといった手口を前提に、侵入に時間がかかる構造になっているかが重要です。

戸建て住宅は「購入後」にこそ防犯対策が必要

新築や購入直後は、住宅性能に安心感を持ちやすいものです。しかし、実際には住み始めてから生活パターンが固定化することで、防犯上の弱点が見えてくることも少なくありません。

  • 夜間は人通りがほとんどない
  • 庭や駐車場が暗い
  • 在宅・不在のリズムが外から分かりやすい

こうした点は、住んでみて初めて気づくことが多いものです。防犯は「住宅購入時の検討項目」ではなく、「暮らしの中で調整していく要素」と捉えるとよいでしょう。

費用別・段階別に考える防犯対策

数千円から始められる簡易対策

防犯対策は、必ずしも高額な費用をかける必要はありません。まずは以下のようなかんたんな対策から始めることができます。

  • 人感センサー付きの照明
  • 窓や扉に取り付ける簡易アラーム
  • ダミーカメラや防犯ステッカー

これらは「この家は対策をしている」という印象を与えるだけでも効果があります。

数十万円規模のリフォーム型対策

次の段階として検討されるのが、住宅そのものの性能を高める対策です。

  • 防犯ガラスや補助錠の設置
  • シャッターや面格子の導入
  • 玄関ドアの交換や強化

これらは侵入に時間をかけさせる効果が高く、結果的に侵入を諦めさせる要因になります。自治体によっては、防犯対策に対する補助金制度が用意されている場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

本格的な防犯設備・ホームセキュリティ

より安心感を求める場合、ホームセキュリティの導入も選択肢の一つです。
ホームセキュリティの大きな特徴は、万が一の際に人が駆けつけてくれる体制があることです。これは高齢者世帯にとって、心理的な安心感につながります。
現在は、月額制のサービスだけでなく、買い切り型のシステムも増えており、ライフスタイルや予算に応じた選択が可能です。共働き世帯の増加や、高齢者の単独在宅時間の長さを背景に、近年ニーズは高まっています。

本格的な防犯設備・ホームセキュリティ

万が一侵入された場合の心構え

どれだけ対策をしても、リスクをゼロにすることはできません。だからこそ、万が一侵入された場合の行動を事前にイメージしておくことが重要です。
最も大切なのは、命を最優先にすること。物を守ろうとして無理に対峙する必要はありません。安全な場所に避難し、助けを呼ぶことを第一に考えるべきです。
家族間で「何かあったときはどうするか」を共有しておくだけでも、いざというときの判断は大きく変わります。

防犯は「できる範囲から」始めればいい

防犯対策は、完璧を目指すものではありません。重要なのは、今の暮らしに合った対策を、無理のない範囲で積み重ねていくことです。
住宅購入後、間取りや設備と同じように「防犯」も住まいの重要な要素の一つとして考える。その意識が、高齢の親の安心や、離れて暮らす家族の安心につながります。
まずは小さな一歩から。防犯は、暮らしを縛るものではなく、暮らしを守るための設計なのです。