不動産の「囲い込み」とは?

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住まい探しの際に、「売りに出されている物件なのに、内見や購入をさせてもらえない」ことがあれば、それは「不動産の囲い込み」と呼ばれる悪質な事例かもしれません。
この記事では、知っておいていただきたい「不動産の囲い込み」についてご紹介します。

片手仲介と両手仲介

「不動産の囲い込み」と切っても切り離せないのが、片手仲介と両手仲介という概念です。
ここでは、まず両者の特徴についてご説明します。

片手仲介

家を売りたい人は、不動産会社に仲介手数料を支払って、売却情報の拡散を手伝ってもらう一方、家を購入したい人は、仲介手数料を支払うことで、条件に合う物件を紹介してもらいます。
仲介業者と表現されるのは、不動産会社がこの仲介手数料で成り立っているからです。
物件を売りたい「売主」から依頼を受けた不動産会社は、通常、一週間以内に、「レインズ」というネットワークシステムに物件情報を登録し、他の不動産会社に「買主」探しを協力してもらいます。 この際、他社が買主を見つけてくれた場合は、その会社に買主からの仲介手数料が支払われます。
このケースでは「売主と買主のそれぞれに別々の不動産会社が仲介を行う」ことになりますが、この状態を不動産業界では「片手仲介」と呼びます。

両手仲介

片手仲介に対して、一つの不動産会社が「売主と買主両者から依頼を受けて仲介を行い、その両方から仲介手数料をもらう」ことを「両手仲介」と呼びます。
多くの不動産会社は、片手仲介よりも利益が大きい「両手仲介」を目指して営業を行なっているのが現状です。
買主と売主の両方が納得できる金額で取引できれば、同じ不動産会社が担当した方が交渉も円滑になるというメリットがあります。

片手仲介と両手仲介

不動産の囲い込みとは

「両手仲介」自体は違法ではなく、それどころか、上記のような良い面もあることは確かです。
しかし、一部の不動産会社の中には、自社の利益を優先し、売却を依頼された物件を他社に紹介しなかったり、売却手続き中などと言うことで、情報操作を行い、物件を独占してしまうことがあります。 これを「不動産の囲い込み」(以下「囲い込み」)と言います。

囲い込みをされるとどんな影響がある?

「囲い込み」をされた物件は、他社の協力を得られずに売れ残り、不本意な値下げを要求されることも多く、売主の売却機会と利益を喪失させる可能性があります。
また、気に入った物件が「囲い込み」された物件だった場合は、WEB上に広告が出されているにも関わらず、理由をつけて見学をさせてもらえなかったり、特定の不動産会社でしか契約できなかったりという事態も発生します。
これは、より良い物件に出会う機会を奪う行為なので、買主にとってもデメリットがあると言えるでしょう。

不動産の囲い込みとは

囲い込みを避けるためにできること

こうした行為に注意するために、実際に不動産会社へ足を運び、自社の利益のことだけではなく、「理想の住まい探し」を親身になってサポートしてくれる担当者か、自分の目で見極めることが大切です。
ただし、「囲い込み」は、特に買主から判断することは至難の業です。それでも、「囲い込み」について知っているということだけで抑止力になる可能性があります。
不審に思った点は素直に質問してみたり、利害関係のない不動産会社などに相談してみたりするのも一つの方法です。
「両手仲介」を多く行っている会社は、「囲い込み」も行っている可能性があります。仲介手数料の上限は法律で決められていますが、仲介実績の平均料率がこの上限を超えていれば、「囲い込み」を行っている可能性も考えられます。

囲い込みを避けるためにできること

主要な不動産会社の情報は公開されていることが多いので、気になったら確認してみても良いでしょう。
不動産の仲介手数料の上限額は、売買金額により200万円以下・200万〜400万円・それ以上の3段階に分けられ、さらに段階ごとにかかる料率が異なるため、それぞれ計算し合算しなければなりません。
そこで活用したいのが「速算法」という計算方法です。速算法は以下のとおり、大変シンプルな計算方法になっています。

速算法:物件価格×3%+6万円

上記計算で出てきた金額に消費税を足せば、仲介手数料の上限額が簡単に算出できます。
自分がもし住まいを売る立場になった時にも、「囲い込み」は避けたいですよね。
不動産会社が物件の売却情報を他社へ公開・共有するシステムを「レインズ」といい、売主の依頼から一週間以内に情報を登録することになっています。
しかし、「囲い込み」を行う会社は、そもそも「レインズ」への登録を行わないことがあるため、売り出しを1社に任せたけど「1ヶ月経っても問合せすら入らず、値下げを勧められた」など、不安に思う点があった場合は、 不動産会社にレインズの「登録証明書」を見せてもらいましょう。 あるいは、他の不動産会社を通して、自分の物件がレインズに正常に登録されているかを調べてもらうのもいいかもしれません。
登録証明書がすぐに出てこなかったり、レインズ上で自分の物件が「商談中」などと実際と異なる内容で登録されていたりする場合は、「囲い込み」の可能性が非常に高くなります。
このような行き過ぎた利益追求の行為は、「囲い込み」をしないと不動産を売却できない「小さな会社」に多いと思われがちですが、知名度のある会社だからと言って、安心できるわけではありません。
大手不動産会社にも、利益を安定させるためのノルマなどは存在するので、会社の規模に関わらず「囲い込み」が行われる可能性があるというのが実情です。

まとめ

今回は、不動産業界の闇とも言える「囲い込み」についてご紹介しました。
マイホームの購入もしくは売却の際に、知らないうちに損をするのは残念ですし、できれば避けたいことですよね。
健全な取引を行うためにも、不動産会社に丸投げするのではなく、こうした行為が存在する事実を理解しておくことが大切です。