はじめての賃貸管理〜敷金・礼金の定義〜
- 賃貸管理
賃貸物件を探していると、必ずと言っていいほど「敷金」と「礼金」いう言葉を目にしますよね。
借りる側の立場で考えると敷金・礼金は安いほうが嬉しいですが、オーナーの立場で考えると高い方が嬉しいのではないかと思うでしょう。
しかし、それぞれの定義や用途を理解していると、単純に価格だけで判断ができるというわけではありません。特に、オーナーは敷金・礼金をいくらに設定すればよいか悩むポイントでもあります。
今回は、オーナーから見た「敷金」と「礼金」の定義や用途を説明していきます。
「敷金」とは
敷金とは、入居者がオーナーに預け入れるお金を指します。気を付けなくてはいけないポイントは、オーナーは受け取った敷金を入居者が退去するときに返さなくてはいけないことです。
敷金の代わりに保証金としてお金を預かることもありますが、基本的に用途は同じになります。
では、なぜオーナーは敷金や保証金というかたちでお金を預かるのでしょうか?
それは、家賃の滞納が発生した際や、賃貸物件の修繕費用などに充てるためです。もし家賃が滞納された場合、オーナーは入居者に支払いを催促することができますが、それでも家賃が支払われない場合、連帯保証人がいれば連帯保証人に請求することが可能です。保証人がおらず最終的に家賃の回収ができなかった際に、敷金を受け取っていれば、敷金から滞納分に充てることができます。
敷金を家賃に充てるときのポイントは、オーナーの判断で家賃に充てることができるということです。入居者が「家賃に充ててほしい」と依頼できる権利はありません。
敷金は修繕費用に充てられる
敷金は退去後の修繕費用に充てることもできます。入居者の退去後は、国交省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿って原状回復を行います。その原状回復に費やした金額を、敷金から充てることが可能です。最終的に、原状回復費用を差し引いて残った金額を退去者へ返します。
国土交通省:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(外部サイトへ移動します)差し引く金額を決めているケースも
物件によっては「償却」や「敷引き」といったように、退去時に敷金や保証金から差し引く金額をあらかじめ決めているケースもあります。
たとえば、敷金が50万円で償却が20%であれば、退去時に10万円分は退去者に返さなくてもよい金額となります。この10万円で原状回復を行うのですが、5万円で済んだとしても、残りの5万円は退去者へ返す必要はありません。しかし、10万円で原状回復費用が足りないときは、不足分を残りの敷金から充てることが可能です。
敷金の返済はトラブルになる可能性もありますので、契約時点でお互いに確認することをおすすめします。
「礼金」とは
礼金とは、入居者がオーナーに支払う謝礼のようなものです。諸説ありますが、子どもを下宿先などに送る際、オーナーに面倒をみてもらうお礼の意味で、親が支払っていた名残とも言われています。
礼金は敷金と異なり、退去時に返す必要がありません。したがって、その金額がまるまるオーナーの利益となります。
金額はいくらに設定すべき?
それぞれの定義や用途が理解できたら、やはり気になるのは「いくらに設定すればよいか」ということでしょう。敷金と礼金を高く設定するときと、安く設定するときのケースを考えていきましょう。
敷金の設定について
まず、どんなときに敷金を高く設定するのでしょうか。
考えられるケースとしては、物件が広い場合や、お店として貸し出すようなときです。なぜなら、退去時の原状回復費用が多くかかる可能性があるためです。家が広ければクリーニングの対象範囲も広まりますし、お店として利用すると想定以上の汚れや傷が発生することが考えられます。あらかじめ多く貰っておくことで、退去時に追加で退去者に支払ってもらう必要がなくなります。敷金を安く設定するケースも考えてみましょう。
敷金を安く設定するときは、早く入居者を見つけたいときや、なかなか入居者が見つからないときのことが多いです。入居者にとって、敷金は将来返ってくるといっても大きな初期費用です。敷金が0円であれば、初期費用が安く抑えられるので集客力の向上に繋がります。しかし、退去時に原状回復費用を全額要求することになるので、トラブルになる可能性も考慮しないといけません。
礼金の設定について
次に礼金について考えていきましょう。
礼金を高くするときは、人気の物件や、引っ越しの繁忙期などで需要が高いときです。需要が高い物件の礼金を極端に安くしたり0円にしてしまうと、多数の申し込みが重なり、オーナーとしても入居者の選定に迷ってしまったり、事務作業の手間が増えてしまいます。
反対に礼金を安く設定するときは、たとえば需要の低い物件や引っ越しの閑散期です。
オーナーにとって礼金がもらえないことは、収益が低くなることに繋がります。しかし、それ以上に空室の期間が続くことの方が利益を削ることになってしまいます。したがって、礼金の収益を削ってでも、集客を強める方が長期的に考えてメリットがあることも意識しましょう。
以上が、敷金や礼金の価格をいくらに設定するべきかという判断基準の例です。
まとめ
今回は敷金と礼金の定義や用途について、説明しました。礼金は入居者に返す必要がないため、物件や時期によって価格を変えて集客の調整ができます。しかし、敷金は退去時に返さないといけないので、入居時だけでなく長期的な目線で、必要な価格を設定しなくてはいけません。特に原状回復費用に関しては、トラブルが起こる可能性もあるため、価格設定時から考慮しておくと安心です。
オーナーにとって敷金と礼金の定義や用途を理解しておくことは、将来的なリスクを減らすことに繋がりますので、入居者を募集する前にあらかじめしっかりと理解しておきましょう。