はじめての賃貸管理〜原状回復をめぐるトラブルとガイドラインとは?〜
- 賃貸管理
退去時に原状回復費用を貸主、借主のどちらが負担するかについて、トラブルが発生することがあります。
オーナーとしてもこのようなトラブルは避けたいところです。そのために、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という基準をまとめています。
今回は、このガイドラインがどのような内容なのか、原状回復費用の負担割合はどのように定められているのかを解説します。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とは
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とは、平成10年に国土交通省が原状回復費用の負担に関する基準をまとめたものです。
当時から退去時の原状回復費用に関するトラブルが多発していたため、賃貸住宅契約の適正化を図る目的で作成されました。
そもそも民間住宅の賃貸契約は、契約自由の原則に基づき、法律などに抵触しない限りはどのような内容でも有効となります。行政が賃貸契約の内容について規制をかけることも、あまり適切ではないとされています。
そのため、物件のことについて入居者とトラブルになった際は、契約書の内容にのっとり対応することが原則になります。
原状回復のトラブルは、退去時の問題と思われるかもしれません。しかし、ガイドラインにも記載されているように、入居前の契約の確認や入居時のキズ・汚れの確認をしておくことがトラブルを未然に防ぐことに繋がります。
原状回復とは
まずは原状回復とはどこまで復旧することなのかを明確にしなくてはいけません。
ガイドラインにおける原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
つまり、原状回復とは入居したときの状態に戻すことではなく、普通に住んでいればつくであろうキズや消耗(経年劣化)の復旧と、それらの範囲を超える損傷の修理の2種類のことを指します。
原状回復費用における負担割合の考え方
原状回復は修理となるため、費用がかかります。
では、どのような割合で貸主と借主の費用負担を考えるのでしょうか?
このガイドラインでは、損耗等を3つの区分に分けて考えています。
1.建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年劣化)
経年劣化とは、通常通り使用していても年数が経つにつれて劣化していく部分を指しています。この経年劣化部分の負担に関しては、家賃に含まれているという考え方をするため、貸主(オーナー)の負担です。
例として、クロス(壁紙)の耐用年数は6年と設定されており、新品の状態から6年経過したあとは、価値が1円になるという考えかたをします。これを「減価償却」と言い、耐用年数の経過後には1円の価値になるため、6年間住んでから退去する際にクロス(壁紙)が消耗していても、それに対して入居者が原状回復費用の負担をすることはほとんどありません。
2.賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)
経年劣化と同じように、通常の使用で発生する損耗も家賃に含まれているという考え方をするため、オーナーの負担となります。
しかし、この通常の使用という言葉自体があいまいであるため、ガイドラインにおいて具体的な事例が記載されています。例として、下記のようなものが通常の使用による損耗と考えられます。
- 畳・フローリングの日焼け
- 家具の設置によるへこみ
- テレビの設置による壁の電気やけ
- エアコン設置による穴・跡
これらも全て家賃に含まれていると考えるため、オーナーの負担となり、原状回復において入居者が負担することではないとされています。
3.賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等
この区分が、入居者が負担する原状回復費用です。こちらも具体的な事例がガイドラインに記載されています。
- 引っ越し作業などで発生した床のキズ
- 床や壁などへの落書き
- タバコのヤニ・におい
上記のようなものは通常使用による損耗ではないとされ、原状回復費用は入居者の負担になることが多いです。
こちらの区分には、入居者の過失などによる損耗に加えて、通常の使用による損耗だが手入れが悪く発生したと考えられる損耗も含まれます。
例えば、使用後のお手入れを怠ったために残ってしまった台所の油汚れなどです。このような汚れなどが退去時に残っている場合は、賃貸契約の内容にのっとり回復費用は入居者の負担となるので、トラブルを防ぐために退去時に貸主と借主で確認しておきましょう。
まとめ
今回は国土交通省が発表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について解説しました。
退去時の原状回復は最もトラブルになりやすい項目です。ガイドラインが発表されてからも、トラブルの件数は増えています。退去時になって考えるのではなく、契約を結ぶ段階で貸主と借主で、原状回復に関する項目を話し合っておこくことが、未然に防ぐ有効な手段です。
まだ先のことだからと油断せずに、早い段階で対処しておき、気持ちよく退去手続きができる環境を整えておきましょう。