はじめての賃貸管理〜事業用賃貸借契約の特徴〜

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入居者が物件に入居するときには、賃貸借契約書を結びます。
これは契約を結ぶにあたって非常に重要な書類なのですが、内容が難しいため、オーナー様としてはあまり目を通していない人もいるのではないでしょうか。しかし、賃貸借契約書は非常に重要な書類のため、オーナー様も必ず目を通すことをおすすめします。

なぜなら、契約内容によっては退去時に戻ると思っていたお金が戻ってこなかったり、契約途中で解約にお金がかかってしまったりするからです。特に、事業用に物件を貸す場合は、契約内容を理解していないと想像以上の費用が発生してしまう恐れがあります。
この記事では、事業用賃貸借契約の特徴や住居用との違いを解説します。

事業用賃貸借契約の特徴

事業用賃貸借契約の特徴

1.用途

事業用賃貸借契約を結ぶときは、借りる人がどのような用途で利用するかを必ず確認しましょう。口頭で確認するだけでなく、合意に達したら契約書に明記しましょう。用途を明確にするべき主な理由は以下の3つです。

賃料に係る消費税の有無

住居用の賃料には消費税がかかりません。しかし、事業用となると消費税が課税されるため、支払ってもらう金額が異なります。もし、住居用で契約したにもかかわらず、店舗や事務所として利用されていると、本来支払われるべき消費税が支払われていないことになります。

セキュリティリスク

もしマンションやアパートなどの集合住宅の一室を事業用として貸し出すのであれば、人の出入り頻度を確認しましょう。一般の住人がいるところに不特定多数の出入りがあると、不安に感じる入居者もいるでしょう。また、営業時間によっては深夜に出入りが多くなる可能性もあります。建物によっては1階のみを店舗利用とし、2階以上を居住用としていることもあります。

用途地域に違反する恐れがある

都市計画法には用途地域が定められており、店舗としての利用ができない地域があります。もし、その店舗利用ができない地域に該当しているのに用途を決めず契約をしてしまうと、入居者が知らずに事業用として利用してしまうおそれがあります。

2.契約期間

次に契約の期間について確認しましょう。
まず、大きく「普通借家契約」と「定期借家契約」の2つに分かれます。

普通借家契約

契約期間の満了日がきても自動的に更新される契約です。また、契約期間を1年未満に設定すると、「期間の定めがない契約」として扱われます。

定期借家契約

定期借家契約は定められた期間の終了とともに、その契約も終了となります。しかし、貸主と借主が合意した場合は再契約することもできます。契約期間に関しては、オーナーの判断で定めることができます。数年後に取り壊しやリフォームなどが決まっている場合は、定期借家契約にしておくとよいでしょう。

気を付けるべき点

普通借家契約は、定められた事前の期間のうちに告知をすることで解約が可能となります。
しかし、定期借家契約は原則として中途解約ができません。もし、中途解約するのならば、借主は残りの期間の賃料を支払わなくてはいけない可能性があります。
ただし、契約時に特約として「事前告知によって中途解約を可能にする」ことも可能です。テナントであれば6ヵ月ほどの期間にすることが多いでしょう。また、契約してから1年間は中途解約不可能や、契約年数ごとに違約金の割合を変えるなどの対応も可能です。
オーナーとしては、テナントの早期撤退リスクを回避するために定期借家契約にすることもあります。

2.契約期間

3.原状回復

事業用として貸し出す際は、原状回復について契約時にしっかり取り決めておくことが重要になります。なぜなら、事業用物件の退去時の原状回復はトラブルになる可能性が大いにあるからです。
国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、住居用を考えて作成されていて、事業用に応用することは困難です。
したがって、造作物(入居者があとから取り付けたもの)が多くなりがちな店舗として貸し出す際は、事前の取り決めが非常に重要です。

例えば、原状回復について取り決めをしなかった場合のケースを考えてみましょう。
飲食店が原状回復をせずに退去した場合、問題点が多く発生します。

  • 元のスケルトン(内装をすべて撤去し空っぽになった状態)に戻す費用は誰が負担するのか?
  • 退去した飲食店が設置した設備をオーナーが買い取ることはできるのか?
  • 設備を買い取り、そのまま居抜き物件として入居者を募集しても、飲食店を営む人しかターゲットにできない

したがって、事業用として契約書を結ぶのであれば、退去時にどのような状態で返してもらうのか、原状回復費用を敷金から相殺するかどうか、取り付けた設備などの買取りは行うのかなどを最初に決めておくことが重要です。

3.原状回復

まとめ

事業用として貸し出す物件は、住居用と比べて価格も高く、日々の利用方法も物件に負荷がかかります。物件を貸し出すオーナーも、事業用として借りる入居者も、ともにリスクを背負っています。住居用の賃貸借契約より複雑な面が多いですが、契約締結前に入居から退去までを見越して、お互いが納得できる契約を締結しましょう。

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