借地権とは何か?〜メリット・デメリット〜

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住まいを探すために住宅情報を検索していると「借地権付き建物」がヒットすることがあります。今回はこの「借地権」とはなにか、所有権との違い、メリット・デメリットについて解説します。

借地権付き建物のメリットとデメリット

借地権付き建物には次のようなメリット・デメリットがあります。

借地権付き建物のメリット

  • 価格が安い
  • 土地の固定資産税がかからない

借地権付き建物のデメリット

  • 定期借地権付の建物では居住期間が限られる
  • 定期借地権付の建物では資産価値は年々減少する
  • 借地料を支払う必要がある
  • リフォームするには地主の承諾が必要
  • 銀行の融資がおりにくい
借地権付き建物のメリットとデメリット

どうしてこのようなメリットやデメリットがあるのか、所有権、地上権、賃借権や借地権、それぞれの権利とはどういったものかを整理しましょう。

所有権、地上権、賃借権、借地権の違い

まず借地権を理解するために所有権と地上権、賃借権、借地権の意味を整理しましょう。

所有権

所有権とは、特定の物を直接的に支配し、使用・収益・処分することができる権利(物件)のことをいいます。所有権をもっていれば直接的、排他的に、誰にも邪魔されずにその物を支配できることが原則ですが、実際にはいろいろと制限を受けます。
例えば今回比較する地上権や賃借権を自ら設定したような場合(つまり、他の人に貸し出したような場合)です。これらを総称して用益権といいますが、自ら設定した以上その使用を妨げることはできません。納得して人に貸し出している部屋に、所有者だからといって自由に出入りはできないのです。
また、公益上の都合で制限をうけることがあります。こちらの例として街の真ん中の100㎡の土地上に100階建のビルを建てることはできません。倒壊の危険があり近隣に迷惑をかけるためであり、このように公益を守るために建築基準法、都市計画法、農地法など法律によって制限をうけることがあります。

地上権

地上権とは、住宅を建てるためやトンネル、高速道路、地下鉄などを建設するために、他人の土地を使用する権利(物件)のことをいいます。地代を払うことは当然に発生することではなく、所有者と地上権者との契約によります。

地上権は物件であり直接の支配権があるので、地上権者が自分で使用することはもちろん、地上権に担保を設定してお金を借りたり、他人に貸したり、譲渡することができます。
地上権の場合、これらの行為をするにあたって所有者の承諾はいりません。

所有権、地上権、賃借権、借地権の違い

賃借権

賃借権は、所有者に対してお金を払うことで借り受けている権利(債権)のことをいいます。
賃貸借は文字通りお金を払う対価として借りることをいい、無償で借りる場合は「使用貸借」と呼び区別されます。賃貸借の場合は、担保設定をすること、所有者に無断で転貸(又貸し)することや譲渡することはできません。

借地権

借地権は、賃借権と同じ意味で用いられることもありますが、正しくは借地借家法によって保護される権利を指しています。
借地借家法では、建物の所有を目的として設定する、地代を支払う条件付きの地上権と賃借権を規定しています。
建物所有を目的としていない駐車場や資材置き場などは借地権の対象とはなりません。

借地借家法

平成4年8月に新借地借家法(新法)が施行されたことによって従来の借地法および借家法(旧法)は廃止されました。 これ以降の契約については新法が適用されますが、新法の施行前から既にある契約は依然として旧法が適用されます。
旧法においても新法においても建物の所有を目的とする地上権については賃借権と同じくこの法律によって規定されています。

借地権の更新・存続、定期借地権

旧法においても新法においても借地権が原則として更新すること、基本的に保護されるものだとする方針に変更はありません。
原則として更新される借地権の例外として新しく規定されたものが「定期借地権」です。
旧法によれば借地人(借りている人の方)の権利が強すぎたために一度土地を貸してしまえば土地所有者が更地にして土地を返してもらうことはほぼ不可能でしたから、借地として土地を貸すことをためらう方が多くなりました。そのため、土地を気軽に貸し出せるようにするための方策として定期借地権が創設されたのです。
定期借地権では期間を定めて土地を貸す約束をするので、約束した期間が経過すれば土地を必ず返してもらえます。建物があっても、期間が経過すれば土地を借りた人の責任で建物を取り壊したうえで土地を返さなければなりません。

建物に耐久性があり、期間が満了しても充分に価値があり「建物を取り壊すのはもったいない」と双方が合意をすれば、土地所有者に建物を買い取ってもらう「建物譲渡特約付き借地権」の設定もすることができます。

借地権には、存続期間の定め方によって下記種類があります。

  1. 普通の借地権
  2. 定期借地権
    • 一般定期借地権
    • 建物譲渡特約付き借地権
    • 事業用借地権
  3. 時使用目的の借地権
借地借家法

借地権の譲渡や建物の増改築には地主の承諾が必要

土地所有者と借地人とはお互いの信頼関係にもとづいて借地契約を行いますから、土地所有者と全く関係のない他人が契約関係に入ってきては困ります。そのため、借地権を譲渡するには土地所有者からの承諾が必要だとしています。
また、建物の増改築を行えば建物の耐用年数が長くなり、借地権の存続に影響を与えますから、このような場合にも土地所有者からの承諾が必要になります。
一方で借地人からすれば必要があるのに、土地所有者が承諾をしなければ困ることがあります。お互いの利益を調整するために新法では、裁判所に対して土地所有者の承諾(許可)に代わる裁判を求めることができることが規定されました。
また、土地所有者との契約において、合意があれば当初から土地所有者の承諾なしで借地権の譲渡=借地上の建物の譲渡(売買など)ができることを約束することも可能です。
そのため流通性が重要視される一戸建てや分譲マンションにおいては、譲渡転貸に土地所有者の承諾は不要だとする特約が付されているものが一般的です。

借地権上の建物の売買

建物は空中に浮遊しているわけではないので、土地と切り離して建物だけを売買の目的とすることはできません。
借地権付きの建物を売買するということは、建物と同時に借地権も売買することです。

売買代金の決め方

借地権付き建物の売買代金は建物そのものの価値と借地権の価値との合計になります。
借地権の価格については相続税や贈与税についての税務署の見解があり通常はこちらに沿って借地権価格を計算しています。

国税庁:No.4611 借地権の評価

一戸建てや分譲マンションにおいては、通常定期借地権付きの建物として分譲されています。定期借地権ですから、存続期間の定めがあり期間が満了すれば更新されません。
そのため、50年の定期借地権付きの建物を契約後40年経過して売買する場合には残りの10年間しか建物を使用できませんから、建物の価値は残り10年分の価値で判断されます。

地主の承諾

借地権を譲渡するためには原則として土地所有者からの承諾が必要です。譲渡することに土地所有者の承諾が必要であることは旧法でも新法でも同じです。土地所有者が無償で承諾をしてくれればよいのですが、一般的には承諾料を支払って承諾してもらいます。承諾料の相場は1割程度だとされていますが、事情によって異なりますから注意してください。
なお、先の通り譲渡転貸をすることに承諾が不要とする特約も可能です。
この特約は登記事項になっていますから、不動産の登記事項証明書を取得すればその特約の有無を確認することができます。

メリット・デメリットまとめ

これまでのことから、借地権付き建物のメリット・デメリットについてもう一度整理しましょう。

借地権付き建物のメリット

  1. 価格が安い
    借地権付き建物の場合は土地評価が安いため、その分価格が安くなります。
  2. 土地の固定資産税がかからない
    土地を所有していないため、土地の固定資産税がかかりません。
  3. 半永久的に住むことができる
    定期借地権ではない一般の借地権であれば半永久的に住み続けることができます。
借地権付き建物

借地権付き建物のデメリット

  1. 定期借地権付の建物では居住期間が限られる
  2. 定期借地権付の建物では資産価値は年々減少する
  3. 借地料を支払う
  4. リフォームするには地主の承諾
  5. 銀行の融資がおりにくい

1.定期借地権付の建物では居住期間が限られる

定期借地権では借地権の存続期間に制限がありますから、居住できる期間は借地権の存続期間に限られます。
さらに、存続期間が満了した建物の解体費用も負担しなければなりません。
建物を存続させるために、土地所有者と新たに借地権を設定しなおせば存続は可能ですが、多数の権利者がいる分譲マンションでは、新たな借地権を締結するための建物所有者の同意が必ずしも得られるとは限りません。

2.定期借地権付の建物では資産価値は年々減少する

建物の評価は借地権付きの場合でなくても年々減少しますが、借地権付きの建物の場合借地期間が満了すれば土地評価(借地権価格)も建物の評価も0になります。

3.借地料を支払う

土地を使用するために地上権又は賃借権を設定しているのですから、使用料を支払う必要があります。

4.リフォームするには地主の承諾必要

増改築を伴うようなリフォームの場合には、土地所有者からの承諾が必要です。

5.銀行の融資がおりにくい

借地権付き建物に対して融資をしていない金融機関もあり、建物のみが融資対象になりますから融資額が減額されやすいデメリットがあります。