はじめての賃貸管理〜サブリース(マスターリース契約)とは〜
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「サブリース契約」は、不動産投資において有効な経営手法の一つです。
サブリースを上手く活用すれば、不動産投資において手間を省くことが可能になります。ただし、それは不利なサブリース契約を判断できる知識を持っていることが大前提です。
この記事ではサブリース契約について、特徴やメリット・デメリットなどを解説しています。こちらの記事を読んで、ご自身が所持する物件がサブリース契約に向いているのかどうか、判断する材料の一つになれば幸いです。
サブリースとは
賃貸物件の管理方法は、主に自己管理、委託管理、そしてサブリースの3種類があります。
自己管理
自己管理とは、オーナーが全ての管理業務を自分で行う管理形態です。この方法では、すべての管理を自分で行うため物件の管理費用は大幅に抑えられます。その代わり、オーナーへの負担が非常に大きくなります。国土交通省の調査によると、全ての賃貸物件の管理業務を自身で行なっているというオーナーは、全体の2割程度にとどまるようです。
委託管理
委託管理とは、アパートやマンションの管理業務を不動産管理会社に依頼する方法です。プランによって管理業務の一部だけ依頼するケースもあります。委託管理の場合は委託料や管理料といったコストがかかる上に、プランにない業務については別途費用がかかる可能性もあります。
サブリース契約
サブリース契約とは、不動産管理会社がアパートやマンションのオーナーから賃貸物件を丸ごと一括で借り上げ、それを不動産管理会社から入居者に転貸(又貸し)をするという管理形態です。
サブリースの場合は、空き部屋の有無に関わらず、不動産管理会社がオーナーに「保証賃料」を支払います。
保証賃料とは、不動産管理会社が入居者から受け取っている家賃から手数料などを差し引いたもので、サブリース賃料といわれることもあります。保証される賃料の額は、実際の家賃収入のおよそ80〜90%が相場とされています。
オーナーばかりが得ができるように聞こえるサブリースですが、不動産管理会社にとってもメリットが存在します。
一般的な管理委託では、不動産管理会社に入る報酬は、家賃収入のうちせいぜい5%程度にとどまります。しかし、サブリースを行う場合の不動産管理会社に入る収入は、家賃収入の約10%以上と、およそ2倍になるのです。
集金管理代行
サブリースと似ているサービスとして集金管理代行というものがあります。
集金管理代行は文字通り、賃貸物件の入居者からの賃料回収を代行するサービスです。手数料などを差し引いてオーナーに賃料が支払われるという意味では、サブリースと似ているともいえるでしょう。しかし、集金管理代行では入居者がいない場合には賃料が発生しないので、オーナーは賃料収入を得ることができません。
つまり、空室リスクをオーナーが自ら背負うことになるという点がサブリースとの大きな違いです。
マスターリース(一括賃借契約)
オーナーと不動産管理会社の間で結ぶサブリース契約のことをマスターリース(一括賃借契約)といいます。マスターリース契約は数十年という長期にわたるケースが一般的です。
サブリースは個人でも利用が可能
サブリースはアパートやマンションの経営者だけでなく、分譲マンションや戸建の住まいを所有している個人でも利用が可能です。管理会社によっては物件の1部屋だけや、空き家物件、駐車場などをサブリースする場合もあります。
長期の転勤や結婚などにより今の持ち家やマンションを手放さずに賃貸したい場合や、住む予定がない空き家や物件の1室を長期間貸したいという時でも、サブリースを利用することができます。
サブリースのメリット
サブリースの主なメリット5つをご紹介します。
- 収入の安定
- 管理にかかる手間・費用の節約
- 原状回復の手間が不要に
- 相続税を抑える
- 確定申告の負担を軽減
1.収入の安定
賃貸物件をサブリースにする最大のメリットは、収入が安定するという点です。サブリースの場合はたとえ空室が出ても、オーナーに不動産管理会社から毎月固定の賃料が安定して支払われます。
アパート・マンション経営において自己管理や委託管理をしていると、空室が出てなかなか入居者が決まらない時、オーナーの収入は減るのが一般的です。また入居者が家賃を払えない状況になってしまった場合でも、家賃が滞納される分当然家賃収入は減りますが、サブリース契約においてはこの場合でも不動産管理会社から一定の家賃が支払われます。
そのため、収入が不安定になることの不安から解放されるというメリットがあります。これはオーナーにとってかなり大きな安心材料となるでしょう。
2.管理にかかる手間・費用の節約
賃貸経営にはさまざまな管理業務が発生します。サブリース契約では不動産管理会社が管理業務を全て行ってくれるため、オーナーは運営・管理といった業務から解放されて手間と労力が削減できます。オーナーは、毎月不動産管理会社から送られてくる送金の明細を確認するだけでよくなるのです。また、サブリースを利用すれば運営や管理にかかる費用も大幅に削減できます。
たとえば、入居者を募集する際にかかる広告費をオーナーが負担する必要はありません。空室が出た場合、広告費は不動産管理会社が全面的に負担します。
3.原状回復の手間が不要に
入居者が退去する際はオーナーが部屋のクリーニングや消毒をし、原状回復を行う必要がありますが、サブリースの場合は清掃・消毒費なども不動産管理会社が負担します。これらの費用は入退去が発生するたびに生じるため、一般的にオーナーにとって大きな負担となります。しかしサブリース契約においては不動産管理会社が負担してくれるため、費用を抑えることができ安心です。
4.相続税を抑える
サブリースには相続税を抑える効果もあります。たとえばオーナーが亡くなり物件の相続が行われた場合、通常はその賃貸物件に対して相続税がかかります。
この時、所有している物件の部屋数に対して入居率が高いと、相続税が低くなります。なぜなら、相続税は建物の固定資産税評価額を元に計算されるからです。
賃貸物件の相続税には減額措置が適用されますが、空室に関しては減額措置が適用されません。しかし、サブリースの場合はたとえ空室があったとしても、全ての部屋を不動産管理会社に貸しているという扱いになるため、100%満室とみなされます。
そのため相続税を抑えることができるのです。
5.確定申告の負担を軽減
不動産管理会社とサブリース契約を結ぶと、確定申告の負担を軽減することも可能です。
基本的に賃貸経営における収入は不動産所得に当たるので、確定申告が必要となります。ですがサブリースを活用すれば、入居に関する管理業務も全て不動産管理業者が行ってくれます。そのため、オーナーは入居者の入退去時にかかる費用などの計上が不要となり、確定申告の際に必要な収支の計算が簡単になるのです。
サブリースのデメリット
サブリースのデメリットは、大きく分けて3つ存在します。
- 他の管理方法よりも収入が下がる
- 免責期間がある
- 家賃の見直しで賃料が減ることがある
1.他の管理方法よりも収入が下がる
サブリース契約は不動産管理会社がオーナーと入居者の間に入ります。ですので、入居者の支払う家賃が全額オーナーのものになるわけではありません。家賃の保証率としては、80〜90%が相場とされています。
また、新しい入居者から支払われる敷金や礼金、契約更新時の更新料も不動産管理会社のものとなり、オーナーは受け取ることができません。サブリースの場合、入居者と賃貸借契約を締結するのはあくまでも不動産管理会社だからです。
以上の理由からサブリース契約では家賃収入を最大化することができません。自己管理や委託管理と比べ、必然的にオーナーの家賃収入が下がってしまうのです。
2.免責期間がある
契約によっては建物の新築後や入居者の退去後に、免責期間が設けられていることもあります。免責期間とは、入居付け(住みたい人を募集し入居してもらうこと)を行うための期間として、不動産管理会社が家賃保証を行ってくれない期間のことです。
この期間は大抵1ヶ月〜半年間ほどで設定されています。サブリース契約は家賃収入を保証してくれるものではあるのですが、免責期間の間は家賃を受け取ることができないので注意しましょう。
3.家賃の見直しで賃料が減ることがある
通常は安定して家賃収入を得ることができるサブリースですが、同額の家賃保証が永遠に続くわけではありません。多くの場合、不動産管理会社が保証してくれる家賃の額は2年ごとに見直しが行われます。この見直しにより、賃料が下がることがほとんどです。
まとめ
サブリース契約においては空室のリスクを回避するなど、賃貸物件のオーナーをフォローする仕組みが整っています。しかし内容をよく理解していなければ、思い描いている賃貸経営とは違うものになってしまいかねません。
前述した通りサブリースの家賃の保証率は80〜90%となるのが一般的です。そのため物件を査定してもらえば、契約を行う前に家賃保証額がどのくらいになるのか判断できます。実際に契約する際には長期的な視点を大切に、収支計画の作成とシミュレーションを行った上でサブリースを利用するかどうか、じっくりと検討することをおすすめします。